昨日に引き続いて、今日はオーガニック丸胴吊裏毛のパターンや縫製、アイテムについてお話します。
今回のスウェットシャツの参考にしたのは、60年代頃のアメリカ物。非常にプレーンなプルオーバーです。
この写真を見てもらうと分かると思うのですが、襟ぐり(首周りのカットのされ方)が前身・後ろ身で同じカーブです。アームホールも前後同じカーブになっています。これは丸胴の特徴で、筒状につながった生地をカットするので片身のパターンで前後同じ形状にカットしています。そうしてできるスウェットシャツは前も後ろも同じ形なので、本当は前後がありません。どちらで着ても同じ。ただ、ブランドネームを後ろ衿に付けるので一応前後はあることにしてありますが。ただ、これがビンテージの丸胴スウェットの雰囲気を作り上げています。真横についた太い袖、後ろ衿が抜けてしまった雰囲気がいかにもそれらしく見えます。
しかし、僕は個人的に後ろ衿が下がっている洋服を好きになれないので、衿は大きく変更しています。前後の衿の下がり方に差を付けています。ただ、丸胴だと2枚の生地を一度に裁断しないといけないのでどうするのか?
こんな感じです。前の中心と背中の中心を両端にして脇をつなげたパターンです。こうすると襟ぐりもアームホールも自由に形を作ることが出来ます。最初に知った時に「面白いな」と思ったことなので、少し詳しく書いてみました。
こんなパターンを使って、裁断縫製をお願いしているのは、千葉県市原市の「パウルニット」です。カットソー工場としては珍しく、メンズのアイテム中心のファクトリーです。ここが得意とするのが、フラットシーマー。「四本針」と呼ばれるこのミシンは四本の針糸と1本の下糸+1本飾り糸の合計6本の糸を使って生地の端と端を併せて段差無く縫う特殊なミシンです。
脇接ぎが無く、フラットに縫われていることで不快な肌へのあたりが少ない仕様です。
ここまで説明した素材と仕様で作っている今期の代表アイテムは、60年代のアメリカ製丸胴スウェットをほぼ忠実に再現し、襟ぐりのみを変更したプルオーバーです。すとんとしたゆとりある身頃と太めの袖が今の気分にぴったりの抜け感のあるスタイリングに役立ちます。
胸に入れた「SCHOOL」プリントはヴィンテージのスウェットシャツのプリントから固有名詞(地名)を外しました。
同じプルオーバーでも、よりデザイン性の高いワイドスリーブはドルマンスリーブのような太い袖を8分丈にしています。これ一枚でも存在感があり、シンプルなコーディネートに目新しさをプラスできます。
スウェットパンツも丸胴で作りました。脇にも、前にも後ろにも接ぎがありあせん。ヴィンテージにもある仕様ですが、腰回りがぼってりとした印象になりやすいのを、モダンなシルエットにアレンジしています。
ゆとりのあるヒップ・渡りに対して膝から下を絞り込み、きれいなコーディネートにも取り入れやすいパンツです。もちろん履き心地は最高です。
今シーズンのMARKAWAREの丸胴裏毛のシリーズ、そろそろ着頃、履き頃な季節になってきました。是非一度体験してみて下さい。
Text & Photo : Shunsuke Ishikawa