2015年春夏のMARKAWAREは「FATIGUE」をテーマに原点回帰となるコレクション。ブランドの柱であるミリタリーの再構築という哲学に立ち返り、かつ日本の優れた技術による、丁寧なものづくりをあらためて見直したラインアップとなりました。目を引くのはドロップショルダーやビックシルエットといった、リラックス感を漂わせるアイテムたち。そこにブランドとしては久しぶりにリリースすることになるスニーカーがお目見えします。
ブランドからの着こなしを提案するルックブックは、スタイリスト二村毅さんとフォトグラファー岡田潤さん、ヘアメイク阿部孝介さんというスタッフにより撮影。デザイナー石川俊介が作る洋服を、リアルなスタイリングとしてお見せします。そのスタイリングがどのような意図によるものか、スタイリスト二村毅さんに全ルックを解説していただきます。今回はその3回目、最終回です。
二村:夏にニューヨークに行った時に、anvilとかのリブが入ったちょっとだけヘヴィーオンスのロンTを、大きめで涼しく着て、それにショーツを履いている男の子が何人かいたんですよ。腕まくりをして、セーターを着るような感覚でアメカジのロンTを着ていた姿が記憶に焼きついていて。じゃあ、マーカウェアのロンTをショーツで着るにはどうしようかなと考えたときに、白いパンツにこの絶妙な色のロンTはクールだなと。ほっこりし過ぎないようにシルバーのスニーカーをポーンと合わせていますが、これは春夏の提案としてぜひ作りたかったコーディネートです。長袖のロンTというのも、次の春先からはセーターの代わりになるものとしてカジュアル過ぎずに着こなしたいと思っています。
二村:このコーディネートは、綺麗な切り替えがコンビネーションになっているカーディガンをどう着こなしたらいいんだろうと作ったものですね。先ほど出てきた白のカーディガンも実は2つの白の切り替えだったんですが、こちらは切り替えがはっきりしているもの。重すぎず、ちょっとミリタリーの匂いを入れて着こなすとしたらこういう感じが良いのではないかと。
― パンツはこれで決まりですか?
二村:このコーディネートはひとつの例だと思います。これはグラデーションを意識していますが、パンツをもうちょっと濃い色にして白いスニーカーで抜いてもいいですし、白Tにしてインナーとパンツを近い色にしてもいいですね。いずれにしても、こういう軍パンとカーディガン、丸首Tのシャツの合わせだったら、ちょっと色数を絞って着こなしたほうが大人っぽく見えるという気がします。
二村:石川さん、このシャツはリネンシャツですか?
石川:麻は麻ですが、ラミーですね。
二村:パンツとシャツの光沢感が絶妙に合うなと思いました。綿のパンツというのは自分ではベージュよりカーキやグレーが好きなんですよ。このパンツはグレーがかったカーキで、すごく良い色だなと思いました。こういう綿のパンツだったら白いシャツをタックインしてパフを少し作って着たら、大人っぽくてカッコいいなと思って作ったコーディネートです。
二村:これはもう、柄シャツにつきます。柄シャツをどう着こなすか、というコーディネートですね。石川さん、この柄はどこから着想した柄ですか?
石川:ベトナムのシグナル用のスモーク感をシャツで出したいなと。スモーク感を出したなかにハイビスカスとヤシの木を入れています。
二村:花だと、僕はトロピカルな色が好きなんですが、このシャツはギリギリトロピカルではないところが好きです。この水色と白の柄シャツを、お気楽にならずにどれくらいのさじ加減でシックに着たらカッコいいかなということで、渋い色味のパンツを持ってきました。ここでパンツに重い色を持ってくると、上半身と下半身のコントラストがつきすぎてしまうので、いい塩梅になるように白いスニーカーを合わせています。
二村:白のジャングルファティーグに、コットンのパンツですね。先ほどから少しずつ色合いが出てくるんですが、カーキや深いベージュといったミリタリーの色使いに白を差していくというのはすごく好きな法則で。それでこれも作っています。もちろんこの中にネイビーももちろん合うと思います。ただ、この渋い色合いの中に白いアイテムを足して爽やかさを出すというのもすごく好きですね。
二村:このシャツはカッコ良かったですね。好きです。
石川:ネイビーのシャツなんですが、米軍のスノーパーカーをベースにしたロング丈のシャツですね。ダボっとしたサイズ感の。
二村:このシャツを見た時に、シャツでモッズコートのようにコーディネートができたらいいなと思ったんです。紺のモッズコートを軽く着るんだったらワントーンがカッコいい、でもシャツの軽さもあるからショーツにも合うなと考えていました。中に差し込んだグラフィカルなTシャツも石川さんが作る洋服のなかにたまに出てくるもので、こういうものがコレクションの中に入っているのは面白いなと思うんですよね。
石川:実はこのTシャツは古着からアイデアを拾っています。もともとこのラインの他にU.S NAVYのエンブレムが入っていたんですが、そのエンブレムは抜いてラインだけを残しました。
二村:再びタイガーストライプですね。これも序盤のコーディネートと同じコンセプトですね。軍モノの印象が強いアイテムをサラっと着たらどうなるだろうということで、黒のウールのパンツを合わせて、インナーに白を入れて、という感じですね。さらに、タイガーストライプのエグみをとるためにスニーカーはシルバーでパキっとさせました。このあたりは自分のなかに入っている、90′sの「フェイス」や「i-D」のカルチャーから来ているように感じます。
― このスニーカーはどう思われましたか?
二村:ランニングシューズですよね。僕は基本的に地味派というか、Nikeの色がたくさん入ったスニーカーも好きですけど、基本的には一色のスニーカーがすごく好きなので良いなと思いました。
石川:この数シーズン、世の中全体でスニーカーは非常に注目されていますよね。革靴も面白いんですが、ずっとブランドとして革靴を作っていたのでスニーカーも作ってみようと。そこで自分で履くことを考えたときには、いろいろ入っているものというよりは「抜く」方向で作りたかった。それでもきちんとしたものにするためにオールレザーにしたり、日本製にこだわったりと丁寧には作りました。
― タイガーストライプのフルレングスのパンツをロールアップして。男らしさと「ヌケ」のバランスが絶妙です。
二村:トレンチに細身のパンツは王道ですよね。それがタイガーストライプだったらなお良いと思います。トップスに合わせる色は黒かネイビーだなと。ここでカーキを合わせたりすると、迷彩のイメージから一気にミリタリー方面に持って行かれてしまいそうだったので、最終的にはネイビーのトレンチにしました。
二村:形はL-2Bですが、ネイビーなのでL-2Aですね。ネイビーを自分が着るとしたらどうだろうと想像したとき、まずジーンズということは思いつきますが、こういうミリタリーの短いフライトジャケット的なアイテムにキレイめのスラックスを合わせるというのは好きなんです。このアイテムはいろいろな部分がライトに仕上がっているアイテムと組み合わせたらカッコいいんじゃないかと。僕が実はしてみたい格好のひとつですね。薄い紺のセーターにこういうブルゾンを羽織って、スラックスを穿いて白いスニーカー。自分でやりたいコーディネートですし、そういう格好の人がいたらすっごいオシャレだなと思いますね。
― ありがとうございます。以上で全ルック解説ということになりますが、全体を通した感想をお聞かせください。
二村:やはり、軍モノのあつかいはやはりお上手だなと感じました。守らなければいけない部分と、そこにプラスするちょっとした進化のバランスが保たれているなと。アイテムとしては紺色のスラックスは特に欲しいなと思いました。ドロップショルダーのシャツ、スニーカーも新鮮でしたし、モダンな「ヌケ感」のあるアイテムだと思いますね。いまの気分として、みなさん大きなトレンドというものは見えにくいと思いますが、それは僕らスタイリストも感じていることです。しかし、ルーズではない「ヌケ感」がやはり重要なのではないかと改めて感じます。ルック解説の中でもお話しましたが、そのヌケというのは服を着る人のキャラクターによって変わってくるところでもあるので、みなさんが洋服を着る際にはご自身なりのヌケ感を見つけることがカギになると思います。
Text : Tsuzumi Aoyama