2014春夏のMARKAWAREコレクションがデリバリーを開始しています。テーマに「HOW TO BUILD A CABIN(小屋の建て方)」をかかげ、アメリカのワークスタイルにコルヴュジェの「休暇小屋」から想起するコンフォート感をプラスしたコレクション。2013秋冬シーズンにおけるテーマだった「都会と自然の両方をもつ洋服とは」というコンセプトを引き続き追求するものです。
デザイナー石川俊介のもっか最大の関心である「小屋の建て方」というものを落とし込んだ洋服たちを、着こなしのあしらいで具体的な人物に落としこむのは、スタイリスト二村毅さん。ファッションに精通し、MARKAWAREのルックブックや、紙版のPARKING MAGAZINEの制作でも重要な役割を果たしている二村さんは、MARKAWAREの洋服をどう解釈しているのか。とても興味のあるところです。
そこで、無理は承知で「今季のルックを全部解説していただけないでしょうか?」とお願いしたところ、なんとご快諾のお返事! それでは、とばかりにコーディネートを解説していただきました。インタビューにはデザイナー石川も同席。3回に分けてお届けしてきた全スタイリング解説も今回最終回です。春夏のコーディネートに必要な「ユルさ」、昨シーズンからトレンドになっている巻き物への考え方など、普段の着こなしの参考になる話を聞くことができました。
二村:これはですね、今回のコレクションのなかで非常に目立っているポケットつきのワークパンツで「職人気質」を作ったらどうなるかというコーディネートです。こういうクセのあるワークパンツにシャツというのはひとつ作りたかったので。どこかのいい感じのショップの店長っぽく(笑)。春先はこういう格好をしたいですね。
二村:ゴム引きってカッコ良いじゃないですか。渋いですよね。ブルゾンがトラディショナルな匂いを残し、その渋さがあるところに、あえてポップな色合いをあわせたらどうかなと。そこで、組み合わせてみたらいい塩梅になりました。パンツもダックみたいな厚手なので、ブルゾンの重さとのバランスもいい。男っぽいディテールだからこそ、カラーリングが軽く見えずカッコイイんじゃないかと思います。
— ディテールが目立つ洋服同士のコーディネートのなかで、ポップなカラーリングがほどよく目に楽しいですね。
二村:いい色合いじゃないですか。「いつもよりひとつ色が多い」という感じ。デニムでもいいんでしょうけど、提案としてはこれくらいの色合いで着て欲しいなという思いがあります。
二村:このシャツもブルゾンシャツみたいな感覚で石川さんが作っていたんですよ。前を締めてシャツのように着ているルックもあるんですが、ブルゾンとして着せてもいいなと。そこで黄色いTシャツの上から羽織らせてみました。ネルシャツの使い方と似てますね。Tシャツにカーキのパンツというオーセンティックな着こなしをベースにしながら、シャツをサラッと。
二村:これは、MARKAWAREが考えるリゾートです。
— コーディネートとしては非常にシンプルですよね。シャツとショーツ、あとサンダルだけ。
二村:あれこれといじり回すよりも、こういうシャツを気持ちよく着られるようなコーディネートをしてみたいなと。サラッとしたきれいなパンツにシャツを一枚羽織ったら、という感じであわせています。
— このモデルの彼は、このシャツがすごく似合いますね。
二村:もうひとりのモデルにも着せたんですよ。先シーズンは彼がすごく良かったんですよね。どの服も似合って。でも撮影日に、実際に春夏の服を着せてみたらちょっと違った。春夏に必要なちょっとしたユルさとか、余白のある感じというのが、このモデルのほうがすごく出ていたんです。もう一人に着せるとガチになる。そういう部分も必要なんですが。
石川:もう一人のモデルはブライアンというんですが、2013秋冬はイメージにどんぴしゃだったんですよ。
二村:シーズンによって違うんですね。面白いなと思いました。
二村:来ましたね、ツナギ(笑)。オールインワンというお題が来たときに、僕のなかではまずシャツだろうと。「コルビュジェが作業着を着たらどうなるだろう?」というところを最終的には意識していた覚えがあります。最初は白のシャツだったんですが、ちょっとストイックすぎるなと思ってブルーに変えました。
二村:これはコルビュジェが午後4時くらいにフランスの海からあがってきたら、ということを想像しながら組んだコーディネートです。紺に赤とかいいじゃないですか。フレンチで。Tシャツとショーツだけだと、ちょっと色が強いというか、沈んだ色合いになるので、シャツを巻きました。トラッドな色合いで薄く見えるようなシャツを巻きたくて。だけどこのシャツがあまり気難しいと巻いてる感じにならないなあと思って、そこでサラッと羽織るものということで、いくつか試してこうなりました。で、夕方なのでサングラスを入れて。
— 去年の春夏だと、こうやって肩から羽織るなら薄手カーディガンとか、バスクシャツみたいなボーダーシャツを巻いている人が多かったんですが、今年はシャツがいいんじゃないか、という提案の意味もありますか?
二村:僕はあまりこだわりはないですね。カットソーでもシャツでも、どちらでも良いと思います。ただ、シャツにカーディガンを巻くのが嫌い(笑)。Tシャツに何かを持っているという状態がいい。例えば僕は、コーディネートをするときに「冬物で全身レイヤード」というテーマで組むときには、一枚ずつ脱いでいって最終的にTシャツとボトムスだけになったときにカッコ悪くなるコーディネートは絶対にNGなんです。
— なるほど。
二村:ショーのスタイリングをやらせていただくときもありますが、ショーだと見えないじゃないですか、中まで。でも、全身を脱いでいったときに最後のTシャツとボトムスだけになったときにカッコ悪かったら、それはいくらレイヤードがキマっててもダメなんです。そこは僕のちょっとしたこだわりで。そこから重ねていくんですよ。結果的に中に着ている服は見えないんですが。このコーディネートでも、このパンツにこのシャツを上から着たらカッコいいと思うんですよ。そのシャツを今は巻いている、という状態がリアリティがあるなと。これは飾りじゃないんです。必然に見えて欲しいという思いがあります。こういう巻きもののときは特に。
二村:ここでは、また茶色とかカーキとか、山小屋、一軒家といったグリーンの中を意識しています。それは山で小屋を作っているというリアリティではなくて、コーディネーションの色合いとかニュアンスとして、そっち系のムードになっているところですね。これは迷彩のパンツにはグラデーションでやっぱり黄色が合うなと。石川さんにも相談しましたよね。強い柄のパンツに、プレーンでオシャレなシャツを合わせるというのは王道でいいじゃないですか。それを今シーズンっぽく仕上げたというのがこのコーディネートですね。
— このシャツは、彼によく似あっていますね。肩のあたりがパキっとしていて。
二村:今季は本当に合うモノと合わないモノがハッキリしていましたね。理屈じゃないんですけど、撮影をしながら見ていて、そう感じました。
二村:きれいですねえ。石川さんの作るベージュってすごく好きなんです。柔らかすぎないベージュというか。総合的に洋服としてのディテールも含めての印象なんでしょうけど。この服は一目見たときからセットアップでいきたいと決めていました。白シャツで。そういうシンプルな強さにこだわったところがあります。彼のようにヒゲが生えていてちょっとした味のある人が着ている、白シャツにベージュのスーツって凄くカッコ良いですよね。
石川:日本人はなかなかベージュの上下は着ないですよね。外国の人は着るんですけどね。肌の色の関係でしょうか。
— これで全ルックのコーディネートとなります。
二村:思ったよりもすんなりできてしまいましたね。面白かったです。
— これはどういう意図だったかな、と悩みこむところがなかったですね。
二村:最近ね、考えること……あるんですが、過度に自分のテイストじゃないところに突っ込まなくなったのかもしれません。僕のリアリティに非常に近いところでスタイリングしているので、撮影から少し時間がたっていても無理なく説明できるんだと思います。でもね、石川さん、これは必然的にできちゃいますよ。コルビュジェから来たあれと、小屋の建て方というところからこういう服があって、と。とてもイメージから洋服が素直に繋がっていてやりやすかったです。
石川:そう言っていただけると、作り手としてとても嬉しいです。ありがとうございました!
Compositoin : Tsuzumi Aoyama