「戦後日本住宅伝説ー挑発する家・内省する家」展はタイトルの通り、「伝説」となった住宅を集めた展覧会です。丹下健三の「住居」から伊東豊雄の「中野本町の家」、安藤忠雄の「住吉の長屋」まで16の住宅が紹介されます。
登場する住宅はどれもいろいろな意味で挑戦的です。清家清「私の家」は、公庫の借り入れ条件を念頭にして建てた、家族で暮らす家。横幅10メートル、奥行き5メートルの家で清家夫妻は4人の子を育てました。室内はトイレにもドアがない、ほぼワンルームの構成。長男篤氏は来客があると勉強もできず、ストレスがたまったそうです。
東孝光「塔の家」も都心居住に挑戦する家でした。敷地面積はわずか6坪(20平方メートル)、1層に一部屋ずつの空間が縦に積み上げられています。展覧会場には床に実物大の平面図が描かれていて、どれぐらいコンパクトなのかが体感できます。ここで育った一人娘の東利恵さんも建築家。引っ越してきたときは幼かったので、清家篤さんとは違って違和感なく暮らしたそう。そのほか、家族の増減によってユニットを増減させられる菊竹清訓の自邸「スカイハウス」や、セルフビルドによる異形の建築「幻庵」(石山修武)などが写真や模型、映像で紹介されます。
石山修武《幻庵》1975年 撮影:新建築社写真部/画像提供:DAAS
16の住宅のうち、現存しないものもいくつかありますが、1軒だけいつでも見学できるのが磯崎新の「新宿ホワイトハウス」。ネオダダの作家、吉村益信氏のアトリエ兼住宅として建てられたもので、現在「カフェアリエ」として営業中です。実際に行ってみると、ほかの住宅の空間も想像できるかもしれません。
磯崎新《新宿ホワイトハウス》1957年 撮影:新建築社写真部
「戦後日本住宅伝説ー挑発する家・内省する家」展は8月31日まで埼玉県立近代美術館で開催中です。その後、10月4日〜12月7日に広島市現代美術館、2015年4月に松本市美術館、6月に八王子市夢美術館に巡回予定です。
カフェアリエ http://cafearie.com
埼玉県立近代美術館 http://www.pref.spec.ed.jp/momas/
黒川紀章《中銀カプセルタワービル》1972年 撮影:新建築社写真部
Text : Naoko Aono