2014秋冬のMARKAWAREは「WHOLE LARDER LOVE」をテーマに、「食」を掘り下げるコレクションを展開。都市生活とカントリーサイドでの生活の両立をさまざまな角度から考えた洋服は、クラシックなアウトドア素材であるミラーレーン、ベンタイル、そしてローデンクロスといった天然素材をふんだんに使用して、秋の食材を感じさせるカラーパレットとともに変化に富んだコレクションに仕上がりました。 

毎シーズン製作しているルックブックでは、これらの洋服を都市生活の中でも洗練された大人の装いとして着こなすためのコーディネートを提案しています。デザイナー石川俊介がこだわりを注ぎ込んだ洋服が、スタイリスト二村毅さんのスタイリングとフォトグラファー岡田潤さんの写真によりいきいきと写しだされました。

二村毅さんはエディトリアルを中心に、ショーや広告、アーティストのスタイリングと、その鋭い感性が高く評価されていますが、その二村さんはMARKAWAREの洋服をどのようにコーディネートしたのか。2014春夏コレクションに続く全ルック解説、今回が最終回です。

 

 

二村：これからお見せするルックの前に少しお話をさせていただくと、僕の作風はポートレイトっぽいものが多いんですね。そもそも人を見てこの人はどういう人物なんだろうということを考えるのが好きなので、仕事で海外やアメリカに行ったときにはとにかく人を見ます。そうやって自分のなかに蓄積されたいろいろな人物像が、時間を経てモデルに洋服を着せているときに突然蘇ることがあるんです。彼にこのコートを着せたときにもそれがありましたね。サンフランシスコの、ヘルシーなムーブメントの中にファーマータウンみたいな「フィッシャーマンズ・ワーフ」という場所があって、そこのお肉屋さんがこういう格好をしていたのを思い出したんです。なので、今シーズンの洋服にはいろいろなバックグラウンドがある中でも、僕の中ではサンフランシスコを彷彿とさせるコーディネートです。

VENTILE L24 FIELDMAN MAC COAT ¥62,000 KNOLL KILCARRA TWEED HOODED JUMPER ¥40,000 CHECK VIELLA POLO COLLAR SHIRTS ¥21,000 KNOLL SUPER SOFT TWEED FIELDMAN TROUSERS ¥32,000 HORWEEN CROME EXCELL SERVICE SHOES ¥62,000

二村：今回のルックブックを構成していくうえで、最初は色を限定してミニマルに洋服自体を見せたいという意図があり、そこに少しずつ赤を差し込んだものがあり、さらに農作業とかを取り払って都会的にも着られるということを見せようという意図がありました。この彼はまさに都会的なニュアンスのコーディネートのひとつですね。チェックのシャツを着て、セーターの上からコートを羽織る。パンツも全然違うブルーをあわせ、エンジの帽子を被る。カラーはさまざまですが、その人の個性が重視される着こなしと言えるでしょうね。

 

二村：自宅で育てているローズマリーです。新芽が出てきたんですがそのグリーンがすごくキレイだったんですよ。もともと深いグリーンの葉が生えている中に、浅いグリーンの新芽がポッと出てくるんですよ。その配色は冒頭のグリーンを主体にした一連のコーディネートにも繋がりますし、チラっと見えている枝のブラウンとのコンビネーションというところでも、意外とこのローズマリーは「深い」ですよ（笑）。

(left) SUPER 120S MELTON AWARD JACKET ¥80,000 EXTRA-LONG-STAPLE DOUBLE JERSEY TURTLE NECK SHIRTS ¥14,000 SUPER 120s FLANNEL RELAX TAPERED TROUSERS ¥24,000 HORWEEN CROME EXCELL SERVICE SHOES ¥62,000 (right) SUPER 120S MELTON AWARD JACKET ¥80,000 HEAVY WAFFLE TURTLE NECK ¥18,000 SUPER 120s FLANNEL COMFORT TAPERED TROUSERS ¥24,000 HORWEEN CROME EXCELL SERVICE SHOES ¥62,000

― さて、イメージカットを挟んでスタジャンのコーディネートですね。

二村：これは今季のMARKAWAREのなかでも都会的で洗練された部分を強調するコーディネートです。タートルネックを使い、シューズも革靴。デニムを合わせるのではなく、スラックスにしてみました。少しヨーロピアンな気分も意識しています。

SUPER 120s FLANNEL SPORTSMAN JACKET ¥62,000 SUPER 120s FLANNEL SPORTSMAN TROUSERS ¥26,000 HEAVY WAFFLE CREW NECK ¥16,000 HORWEEN CROME EXCELL SERVICE SHOES ¥62,000 

二村：このジャケットとパンツは、潔くセットアップで着るのが一番カッコいいなと思います。ラグランスリーブにリブ使いというスポーティーなムードですが、MARKAWAREらしいテーラリングが昇華された洋服ですね。

― 石川さんがデザインされるときに、このセットアップは写真のようなストイックなムードを意識されていましたか？

石川：そうですね。トラックスーツのようなイメージです。セットアップにしたときに統一感が出るようにジャケットとパンツに同じリブを使っています。

二村：今回は革靴を履かせましたが、スタンスミスみたいなクリーンなスニーカーもハマると思いますよ。

KNOLL KILCARRA TWEED HUNTING SWEATER ¥35,000 LODEN-STEINER Ascona FIELDMAN SALOPETTE ¥58,000 SUPER LIGHT CORDUROY RAGLAN POLO COLLAR SHIRTS ¥21,000 RABIT FUR ANTELOPE FINISH CLASHABLE HAT SHORT ¥24,000 HORWEEN CROME EXCELL SERVICE SHOES ¥62,000

二村：これもジップのニットのリアルな着こなしですね。ネイビーを基調に何か作りたいなと思っていたところに、このシャツの色がよかったんですよね。僕の好きな配色でネイビーとエンジの合わせというものがあるんですが、その強さのある組み合わせを帽子と靴で少し男っぽい方向に意識付けしているというのがこのコーディネートです。

― このニットはジップがアクセントになっていていいですね。

二村：プレーンな丸首とはひとあじ違っていて、面白いです。

石川：このファスナーは、もともとマウンテンパーカーでつけていたものです。マウンテンパーカーでは温度調整ができるようにフロントに縦のファスナーをつけて胸ポケットのようにしているんですが、そのアイデアをセーターで試してみたものです。プレーンな丸首のタイプもありますが、このジップがついたタイプは展示会でも好評でした。

6oz SELVEDGE DENIM SNOW PARKA SHIRTS ¥22,000　6oz SELVEDGE DENIM APRON SHIRTS ¥22,000　13,5oz MERCERIZED SELVEDGE DENIM 40’s 5Pocket Easy VINTAGE WASH ¥36,000　KNOLL KILCARRA TWEED KNIT CAP ¥12,000　HORWEEN CROME EXCELL SEMI DRESS WORK BOOTS ¥69,000

二村：やはり、デニムとシャンブレーは普遍的な良さがありますよね。MARKAWAREというブランドがもつワーク感と、デニムとシャンブレーというミックスは切り離せない部分。ナチュラルでリアルなコーディネートをいくつかやっていく中で、この素材は外せないものの一つです。

― 同色のシャツとコートの合わせ、最高ですね。

二村：モッズパーカーが僕は好きなので、その感覚で秋口のレイヤードとしてはすごく良いなと思います。靴で少し迷って石川さんに相談して、王道のブラウンに決めましたがこれもナチュラルで良いですね。 

二村：先ほどは自宅で育てているローズマリーでしたが、これは実家で父親が育てているニンジンです。これもレッドとグリーンのコンビネーションですね。 

15d NYLON TAFFETA INNER DOWN VEST ¥31,000 KNOLL SUPER SOFT CREW CARDIGAN ¥28,000　EXTRA-LONG-STAPLE DOUBLE JERSEY TURTLENECK SHIRTS ¥14,000 13,5oz MERCERIZED SELVEDGE DENIM 40’s 5Pocket Easy RIGID ¥24,000　RABITT FUR ANTELOPE FINISH CLASHABLE HAT LONG ¥24,000　HORWEEN CROME EXCELL SERVICE SHOES ¥62,000

二村：ネイビーのデニムと同系色のトップスを組み合わせる着こなしは、一般的には爽やかに見えて入りやすいところですよね。このダウンベストはインナーダウンとして使われているものですが、ルックブックということであえてアウターとして見せながら、着こなしの提案としています。セーターの白ボタンも爽やかですし、ネイビーのグラデーションを引き立てていると思います。 

15d NYLON TAFFETA INNER DOWN CARDIGAN ¥36,000 KNOLL SUPER SOFT TWEED FIELDMAN SALOPETTE ¥39,000 KNOLL SUPER SOFT DETACHABLE COLLAR SWEATER ¥33,000 HORWEEN CROME EXCELL SERVICE SHOES ¥62,000

― こちらはサロペットと長袖のインナーダウンですね。 

二村：これもブルーを意識して作っていたものですね。例えばグリーンで着るサロペットというのは、それだけでピースフルな印象を生みますが、同じサロペットでもブルーにすると都会的になる。そういうコーディネートもありますよ、というのがこの提案です。

LODEN-STEINER Ascona FIELDMAN COAT SHORT ¥95,000 CORDUROY KERSEY COMFORT TAPERED CHINO ¥23,000 CHECK VIELLA RAGLAN POLO COLLAR SHIRTS ¥21,000 HORWEEN CROME EXCELL SERVICE SHOES ¥62,000

二村：ブルー、ネイビーのコーディネートが続きます。上質な素材が持つ重厚な質感を活かしながらストイックに組んだ着こなしですね。上下の色合わせでフロントのボタンもしっかり閉じています。昨今はヌケ感があることやナチュラルであることが良いとされがちですが、きっちりと服を着ることも時にはメリハリとして面白いのではないでしょうか。靴もここまでのコーディネートではネイビーやカーキなど少し色を浅くしたものを選んでいましたが、このルックではキリっとブラックの革靴で締めています。モデルの雰囲気もこの洋服にマッチしていました。

BABY LAMB MOUTON AWARD JACKET ¥180,000 KNOLL SUPER SOFT BIG CREWNECK SWEATER ¥26,000 XINJANG COTTON CHINO MICRO PEACHSKIN RELAX TAPERED CHINO ¥23,000 HORWEEN CROME EXCELL SERVICE SHOES ¥62,000

二村：スーパートラッドとでも呼ぶべき、王道のカラーリングです。ベイビーラムのスタジャンは雰囲気があるので、頑張ったコーディネートにするとゴージャスになりすぎるだろうということで、トラッドの配色を素直に取り入れてサラっと着せたというものです。先ほど、ベージュのベンタイルのジャケットにグレーのセーターをあわせたコーディネートがありましたが、同様にベージュのチノとあわせてもいい雰囲気に仕上がっていますね。

― 以上ですべてのコーディネートを解説していただきました。ありがとうございました！

二村：こちらこそありがとうございました。こうやってひとつひとつ解説するというのは難しいですね。もちろん現場でも考えているんですが、感覚で決めているところも大きいので。あらためて言語化すると、自分でも新しい発見があります。

石川：難しいですよね。もちろん考えは入っているんでしょうが、すべて考えているというよりは感覚で組んでいるものもありますよね。

二村：コーディネートをするときの流れとして、まず石川さんから今季の服について説明していただいて、でも、それはどちらかというと制約として頭に入れているものなんです。ですから、今回解説をさせていただいてあらためて思うことですが、最終的には感覚なんですよね。グッと来るのか、来ないのか。そこに方程式はないということをあらためて感じました。