ここまで5回にわけて、播州織の工場見学について記してきたわけですが、印象に残ったのはやはりどの工程でも人の手、人の目によりできているというところです。織機の経糸のテンションを手で触れて確認していたり、機械のわずかな不調を耳で聞き分けたり、色合いや生地の痛みを目で見分けていたり。すごく大変な環境ではありながら、やはり人の手をかけて作っているものなんですね。
また、現場の工場さんは、本当に真面目ですね。きっちり、いい仕事をしてくれて。ですから、こういうことはできないよということが返ってくることはあるんですが、お願いを重ねて説得すると最後にはわかったと言ってくれて、で、わかったと言った以上は良いものをあげてくれるきちっとした人たち。本当に信頼のおける人たちです。そういう方々に支えられて洋服ができあがってくる。こういう人たちと僕は日本でのものづくりということを続けていきたいと強く思っています。
企画をしたりというのは優秀な人がたくさんいると思うんですが、そういう人たちがいい仕事をしようと思ったときには、やはり日本でものづくりをするということは重要だと思うんですよね。同じ言語を使って濃いコミュニケーションを重ねながらでないと、しっかりとしたものづくりはできないと思っているので。そのためには日本の洋服作りを残していきたいし、それは最初の糸を染めるところから、最後の生地になるところまで、縫製して製品になるところまでは同じ言語でやっていけることはすごく重要だと思っているんです。細かいニュアンスとかもあるので。そこまで目配りができれば本当にいいものはあがってくると思いますし。
今回は生地づくりの部分ということでしたが、この後の工程として「縫製」があります。ここでもドレスシャツはこの工場で、デニムのワークシャツならこの工場がアメリカの大量生産されたワークシャツを縫うための設備と縫い方を熟知している、またその中間ができる工場がある……と、たっぷり語れるお話もありますので、そのあたりもまたあらためて記事にできたらと思っています。
Photo: Shunsuke Ishikawa
Text: Tsuzumi Aoyama