「今季は特別なキーワード、テーマを設けずに、MARKAWAREの原点に立ち返ることを意識しました」とデザイナー石川俊介が語る、MARKAWARE 2015秋冬コレクション。得意とするミリタリーは残しながら、「よい素材、よい縫製でちゃんと作られた綺麗な洋服のため、素材作りからしっかりと取り組みました」との言葉通り、それぞれのアイテムは上品さをたたえた仕上がりになっています。 

ルックブックの製作に携わったのは、スタイリスト二村毅さん、フォトグラファー岡田潤さん。前回に引き続き、二村さんによる全ルック解説をお届けします。

 

LOOK 10 

二村：僕はMARKAWAREがリデザインする軍モノがすごく好きなんです。完成度が非常に高いと思うんですよね。なので、毎シーズンコレクションを見せてもらうときに、ミリタリーの部分ではどんな提案があるのかなということは楽しみにしているんです。その中で、今シーズンはこのカーキのN-1が良いなと思い、どう着こなすかしっかり提案したいと考えました。そこで合わせたパンツがフラノのキャメルカラーのスラックスです。N-1のようなミリタリーのアイテムをアメカジ的にデニムでコーディネートするのではなく、少しきれいめのウールスラックスを合わせる。こういう着こなしは僕個人の持ち味であるのと同時に、ミリタリーのアイテムを新しく見せたいときにまず試す方法でもあるんです。今回はその手法で合わせてみたときに、非常に印象がよかったのでこれに決まりました。

石川：N-1というアイテムはどうしても男臭くなるんですが、見事にきれいなコーディネートにしてもらえたなという印象です。

ー とても品のよい着こなしですね。

中にはトレーナーです。スウェット、N-1とラフなアイテムを着ていながら、あえてスラックスを合わせる、というところですね。今回はモデルのセレクトを含めて「上品さ」ということがテーマでした。事前のミーティングで、服に十分要素が入っているのでヘリテイジ感やアメカジ感をモデルのキャラクターでは出さないと決めていたので、個性よりも洋服のフィットがいいモデルを選びました。着こなしだけでなく全体的なイメージが上品に見えるとしたら狙い通りですね。

 

LOOK 11

ー これは前回解説していただいた、冒頭の LOOK 2 で着ていたコートの色違いですね。

二村：そうです。先ほどのルックとは違う着かたを見せようとしたのがこのルックですね。最初に登場したコートではネイビーのトーン・オン・トーンでしたが、このカーキのコートは前を閉じて、中にはグレーのスウェットを上下で着せつつタートルを入れ、全体の色味としてはカーキのグラデーションですね。で、首元に白を入れているので、靴はホワイトではなくベージュがいいな、と。

— パンツもスラックスではなく、スウェットですね。

二村：スウェットパンツにこのコートというのは相性がいいと思いますよ。スウェットはカジュアルなアイテムですが、決してだらしなくは見えないですし、このコートをきてキマリすぎてしまっているなと思ったときには、スウェットでハズす。少しヌケ感が出ていていいと思います。

 

LOOK 12

二村：これも、スラックスですね。形がとても洗練されているので、ハードなMA-1と合わせました。トップスのMA-1のジップの色の印象からキャメルを選んだら、トップスとボトムスの重さのバランスが合わなかったんです。そこで、ボトムスを少し重めのブラウンにしたらすっきりまとまりました。

石川：MA-１は春夏のシーズンに初めて作った大きめシルエットのタイプを秋冬も継続したアイテムです。肩を大きくして、全体にも丸みを出しているものです。

二村：かっこいいですよね。色味も落ち着いていて良いと思います。

 

LOOK 13

石川：エプロンポケットシャツのドレス版です。襟が脱着式になっています。

二村：秋口に、シャツ一枚で歩く日もあるよね、というコーディネートですね。シャツをどうカッコよく見せるかがテーマでしたが、紺のグラデーションでまとめました。

ー このテーパードのパンツもキレイなシルエットですね。

石川：深いタックの入ったスラックスです。ネイビーのソックス、シューズとの合わせも良いと思います。

 

LOOK 15

石川：LOOK 4でもオーバーサイズでマキシ丈のトレンチコートが出てきましたが、こちらは細身でオーソドックスな丈長のタイプです。

二村：僕の印象ではキレイ目よりのアイテムなので、フランスっぽく着たらどうかなと。そのときには白いシャツではなくて水色のシャツがカッコいいなと。僕のなかでは白と水色では大違いなんです。白ではダメということではないんですが、この水色のほうがこなれていてかっこいいなと。

ー　パンツには細身のフラノのパンツですね。とても落ち着いた佇まいです。

 

LOOK 16

石川：昨年の秋冬でも提案したダッフルです。これは自分のなかでは定番化したいアイテムです。

二村：生地の質感、ディテールのバランスともにきれいなコートですよね。コーディネートとしてはセーターだけで着てしまうとサラっとしすぎてしまうかなという懸念がありました。色合いは優しくていいと思いつつ、質感はしっかりとしたものを差し込みたい、と。

— タートルネックの上に着ているのはGジャンですか？

二村：はい、白いGジャンです。フレンチカジュアルへの憧れというか、僕自身好きなんですよね。Gジャン、ジーパンのセットアップの上にコートを羽織るというスタイルが。実際、そういう服装で街に出ることもあります。だけど、このコーディネート、Gジャンのレイヤードとしてはなかなかない色合いですよね。これをグレーのコートとかツイードにしてしまうとザ・スタイル・カウンシルっぽいんですが、そんな匂いがありつつもちょっと違う感じになっているのが良いと思います。

 

LOOK 17

石川：これも昨シーズン好評で、継続しているスタジャンです。

二村：ありそうですが、実際なかなかない色合いなんですよ。だからこのスタジャンはスタイリングをきちんと提案したいと思って組みました。いくつかコーディネートを試したんですが、自分だったらグラデーションで着たいなということでこういう合わせになっています。

— グリーンの迷彩ですね。違う選択肢もあったんですか？

二村：パンツは黒でも合うと思います。きっと、紺も似合いそうですね。デニムも王道ですし間違いではないと思います。ただ、今季の提案としてはスタジャンをスポーティーすぎずに着るというところでこうなっています。

 

LOOK 18

二村：このリラックスシルエットの、ヘビーオンスのカットソーはものすごく可愛かったですね。素晴らしいです。石川さん、これはカットソーでいいんですよね？

石川：天竺のカットソーです。ウルトラヘヴィー天竺で。

二村：このカットソーは良かったですねえ。半袖なので開き口にハリ感があって、少し大きめのシルエット。でも半袖一枚で着せるとモードなブランドがヌケを作ろうとしているようでMARKAWAREらしくないかなと、サーマルのタートルネックとレイヤードしたら絶妙の秋口のコーディネートになりました。パンツもタックの入った太めのスラックスを選んでバランスをとっています。

 

LOOK 19

二村：フラノの生地で作ったドロップショルダーのブルゾン。このへんから迷彩と合わせていこうかなという意図がありました。この迷彩のパンツとボンバージャケットの色合い、いいじゃないですか。ただ、あまりキャラクタ―が濃い人になりすぎてしまうのもどうかと思ったので、白いセーターと白のインナーダウンで中和しています。

— 今シーズンらしいインナーダウンの使い方といえるかもしれませんね。

二村：インナーダウン、いいと思いますよ。白のハイテクな色合いと、クラシックなブラウンのコントラストとか、暖かいということで機能性もありつつ、素材としてアクセントを効かせることができる。迷彩もトーンが落ち着いているのでモダンに洗練された印象で、スタイリッシュですよね。

石川：タイガーストライプをウールのギャバにプリントしたものですね。あまり濃淡差がないようにしています。

 

＜二回目ここまで＞