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PARKING
衣・食・住・遊のすべてにこだわりを持つ男性のための新しい生き方を模索する、Lifestyle Magazine型のショップ。
洋服のほか男性の生活全般に渡って必要な道具や消耗品をそろえ、「自然と街を結ぶトランスポーター」である自動車も重要なエッセンスとして機能。
PARKING MAGAZINE
今とこれからの男性の生き方を模索するウェブマガジン。働くこと、遊ぶこと、生活することを三位一体とし、「グローバル|ローカル」, 「都市|自然」, 「消費|創造」といった様々な隔たりを軽やかに飛び越えていく、自由で活動的でDIY精神豊かな男性像を模索していくウェブマガジンです。
PARKING COFFEE×CACAO WORKS
数社のロースターと契約し、セレクトしたスペシャリティーコーヒーを提供。
産地から直送されるカカオ豆を自家焙煎し、カカオと砂糖のみを用いた特別製法のチョコレートを販売。
コーヒーとチョコレートで朝の目覚まし、軽いランチ、午後の気分転換、夕方の一休みなどの時間と空間を提供します。

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  • PARKING
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    PARKING

  • PARKING COFFEE X CACAO WORKS
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    Tokyo, JAPAN 150-0061
    153-0061 東京都目黒区中目黒 1-1-45
    TEL: 03-6412-8637

    Existence Co., Ltd.

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2014.11.11
Movie Review Nº18 “Boyhood”12年の年月を凝縮した『6歳のボクが、大人になるまで。』は最高の映画体験になる。

『バッド・チューニング』(1993年)『スクール・オブ・ロック』(2003年)のリチャード・リンクレイター監督の新作『6才のボクが、大人になるまで。』(原題Boyhood)は、今年のベルリン国際映画祭で監督賞を受賞した、2時間45分の長尺な映画。おそらく僕が今年観た映画の中でも、最高の「映画体験」となった感動作だ。

リンクレイター監督といえば、『ビフォア・サンライズ/恋人たちの距離(ディスタンス)』(1995年)、『ビフォア・サンライズ』(2004年)、『ビフォア・ミッドナイト』(2013年)という都合18年間にわたって、アメリカ人学生ジェシー(イーサン・ホーク)とフランス人女学生セリーヌ(ジュリー・デルピー)の恋愛のゆくえを描いた恋愛映画の傑作3部作『ビフォア』シリーズがあるけれど、これは6歳から18歳までのひとりの少年の成長をつづったものだ。なんて気が遠くなるように遠大で、野心的な作品だろう。

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僕が感動したのは、主人公のメイソン・ジュニア(新人エラー・コルトレーン)という男の子の少年時代から大学に進学して親元を離れるまでの12年間の成長をずっと追いかけているからだ。それは必然的に、母親オリヴィア(パトリシア・アークエット)、父親メイソン・シニア(イーサン・ホーク)、姉サマンサ(監督の娘ローレライ・リンクレイター)という家族4人の12年間の「親子関係」もつづっている。実に、家族を演じた4人の俳優の、12年間が凝縮して記録されているわけである。

本作のアイデアが初めて世に知られるようになったのは、いまから13年前(映画の撮影完了から12年前)のことだ。リンクレイター監督が、生まれ故郷のテキサス州オースティンでタイトル未定の映画を撮ると発表した。そのとき、彼は「子供が6歳から18歳になり、大学に進学して親元を離れるまでの12年間の親子関係を描き出したい。しかし、子供に起きる変化は多すぎて十分に語りつくせない。そこで、子供が経験するものすべてを盛り込むつもりで脚本を執筆した」と述べた。それで、主役のメイソン・ジュニアに当時7歳で、テキサス州オースティンの住人だったエラー・コルトレーンが抜擢された。実に、2002年夏から2013年秋までの12年間にわたり撮影は断続的に行われた。つまり、コルトレーンは12年間にわたってメイソン・ジュニアを見事に演じ切ったわけだ。

サブ1

観終わった印象は、『大人は判ってくれない』(1959年)、『アントワーヌとコレット』(1962年)、『夜霧の恋人たち』(1968年)、『家庭』(1970年)、『逃げ去る恋』(1979年)といった、フランソワ・トリュフォー作品ファンならおなじみのアントワーヌ・ドワネル5部作を一気に観た感じに似ている。『大人は判ってくれない』で13歳の少年だったジャン=ピエール・レオーも、『逃げ去る恋』では33歳の中年になっていた。そのドワネル少年の20年間を一気に観た感じなのだ。

あるいはハリウッド映画ならば、『スター・ウォーズ/エピソード1 ファントム・メナス』(1999年)から『スター・ウォーズ/エピソード3シスの復讐』(2005年)までを一気に観た感覚である。ジェイク・ロイドからヘイデン・クリスチャンセンへと交代したアナキン・スカイウォーカー役(顔もどことなく似ている)が成長していく姿を見つめるのに似ている。

サブ2

シングルマザーで、自らのキャリアアップのため大学に通う母親オリヴィアの存在は、メイソン・ジュニア少年にとってとてつもなく大きい。演じているのはパトリシア・アークエットで、すごい存在感。「聞いて、話があるの。申し訳ないけど ヒューストンへ越すわ」と、メイソン・ジュニアの成長期の人生に大きく作用しているのは言うまでもない。早くも、アークエットは来年のアカデミー助演女優賞最有力との呼び声が高い。ジャン=ピエール・ジュネ監督作品に『天才スピヴェット』(2013年、11月15日日本公開)というやはり10歳の少年を主役にした快作があるのだが、ここでの母親クレア(ヘレナ・ボナム・カーター)を比較して観てほしい。成長期の男の子にとって母親は、とても大きな存在なのだから。

父親はリンクレイター作品でおなじみのイーサン・ホークが演じている。アラスカに働きに出ていて、「これからもっと会おう。お前たちがとても恋しかった。パパには時間が必要だったんだ」なんてセリフを吐くのだ。メイソン・ジュニアの人生にはけっして大きくない存在だが、パパ・メイソン・シニアは少年の人生においてターニングポイントとなるべく、作用をする。メイソン・ジュニアの誕生日の日、「お金では買えない、父親から息子にしかあげることのできない家宝のようなものをプレゼントしたかったんだ。これが僕にできる精一杯のことだ」と言いながら、パパ・メイソン・シニアは、ザ・ビートルズの『ブラック・アルバム』を贈るわけだ。このワンシーンだけで、本作がいかにステキかわかるだろう。

エラー・コルトレーン演じるメイソン・ジュニアの顔つきが、少年の顔から大人の男性の顔になっていく。最初は坊主頭だった彼も、徐々に女性を意識して髪の毛を長くするわけだ。それを見つめる愉しさは、「最高の映画体験」という以外に表現のしようがない。

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©2014 boyhood inc./ifc productions i, L.L.c. aLL rights reserved.
11月14日(金) TOHOシネマズシャンテ他全国ロードショー

Text : Mutsuo Sato