CATEGORIES

Close

PARKING
衣・食・住・遊のすべてにこだわりを持つ男性のための新しい生き方を模索する、Lifestyle Magazine型のショップ。
洋服のほか男性の生活全般に渡って必要な道具や消耗品をそろえ、「自然と街を結ぶトランスポーター」である自動車も重要なエッセンスとして機能。
PARKING MAGAZINE
今とこれからの男性の生き方を模索するウェブマガジン。働くこと、遊ぶこと、生活することを三位一体とし、「グローバル|ローカル」, 「都市|自然」, 「消費|創造」といった様々な隔たりを軽やかに飛び越えていく、自由で活動的でDIY精神豊かな男性像を模索していくウェブマガジンです。
PARKING COFFEE×CACAO WORKS
数社のロースターと契約し、セレクトしたスペシャリティーコーヒーを提供。
産地から直送されるカカオ豆を自家焙煎し、カカオと砂糖のみを用いた特別製法のチョコレートを販売。
コーヒーとチョコレートで朝の目覚まし、軽いランチ、午後の気分転換、夕方の一休みなどの時間と空間を提供します。

Close

  • PARKING
    ADDRESS: Watanabe bldg.1F
    1-3-8 Nakameguro, Meguro-ku
    Tokyo, JAPAN 153-0061
    153-0061 東京都目黒区中目黒 1-3-8
    渡辺ビル 1F
    TEL: 03-6412-8217
    EMAIL: info@parkingmag.jp
    STORE HOURS:
    12:00 - 20:00
    WEDNESDAY CLOSED

    PARKING

  • PARKING COFFEE X CACAO WORKS
    ADDRESS: Field Stone 1F
    1-10-5 Kamimeguro, Meguro-Ku
    Tokyo, JAPAN 153-0051
    153-0051 東京都目黒区上目黒 1-10-5
    フィールドストーン1F
    TEL: 03-6427-0806
    EMAIL: info@parkingmag.jp
    STORE HOURS: 9:00 - 19:00
    (Irregular Holidays)

    PARKING COFFEE X CACAO WORKS

  • Existence Co., Ltd.
    ADDRESS:
    1-1-45 Nakameguro, Meguro-ku
    Tokyo, JAPAN 150-0061
    153-0061 東京都目黒区中目黒 1-1-45
    TEL: 03-6412-8637

    Existence Co., Ltd.

Close

2014.09.19
Book Review Nº14 AKUDOU NIKKI written by Agota Kristofアゴタ・クリストフ『悪童日記』が描く「悪」の本質。

 第二次世界大戦時、中部ヨーロッパと思しき空間を舞台に描かれるアゴタ・クリストフの『悪童日記』。

ハンガリー語を母語とする著者がフランス語で記した本書。1986年にフランスの出版社スイユ社から刊行され、現在では40カ国語で翻訳されている。日本でもフランス文学者の堀茂樹による邦訳が1991年に早川書房から刊行された。

 また、2013年には実写映画化がなされ、日本では2014年10月からのロードショーを予定している。

 

 原題を「Le Grand Cahier(大きな帳面)」とする『悪童日記』。双子の兄弟が共同で書く日記の体裁で、一人称複数形式の「ぼくら」が物語を綴る。

 <大きな町>から<小さな町>へ、兄弟が祖母のもとに疎開する場面から始まり、戦時下、疎開先での過酷な境遇を双子の少年の視線で描く本作。

 邦題のタイトルに違わず、盗み、恫喝、殺人から性の倒錯に至るまで、ふたりの悪童による様々な非倫理的行為が描写されているが、日記に記される「ぼくら」の言葉は、不思議なまでに現実主義的で、感傷を挟まない。

 

 本作で徹底して描かれる「ぼくら」の“悪”は、決して通念としての“悪事”ではない。

 汚れた衣服をまとい物乞いを繰り返す「ぼくら」に、通りがかりの婦人が話しかける。

 

「乞食なんかして恥ずかしくないの?私の家にいらっしゃい。あなたたち向きの、ちょっとした仕事があるから。(中略)ちゃんと働いてくれたらば、お仕事が終わってから、私がスープとパンをあげます」

 ぼくらは答える。

「ぼくら、奥さんのご用を足すために働く気はありません。あなたのスープも、パンも、食べたくないです。腹は減っていませんから」(文庫版p48「乞食の練習」より)

 

 訝しがる婦人に対し「乞食をするとどんな気持ちがするか」の確認と「人びとの反応を観察するため」に物乞いをしていると語る「ぼくら」。当然、婦人は立腹してその場を立ち去るのだが、“憐憫の情を拒絶する”という点において「ぼくら」は、反社会性とは異なる意味で、堂々たる「悪童」にほかならない。

 本作の「ぼくら」は一貫して、戦時下における貧困、肉親の死、物理的な暴力に対し、甘えと憐憫の情を拒絶し続ける。

 過酷な境遇を前に、人はいかに振る舞うことができるのか。『悪童日記』で描かれた双子の兄弟のたくましさは、窮地に陥った人間の持ち得る、決して悪ではない、英雄的資質のひとつに違いない。

 

 

Text : Hiroyuki Motoori