PARKING

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〈MARKAWARE〉、〈marka〉の2ブランドから生み出されるウエアには一点一点、物語が眠っています。
原料選びから紡績、製織、染色、縫製、プレス、加工に至るまで、それぞれのウエアが作られる背景や各過程を支える職人や工場、農園を紹介しながら、これから暮らしをともにする洋服により愛着を持っていただけるような情報を共有していくのが「PARKING MAGAZINE」。
アイテム1つずつに深い理解度を持って愛せる、好奇心を持った男性に贈るウェブマガジンです。

FARMSファッションの原点を探る旅

ペルー プーノ県 アルパカ研究牧場「MALKINI」

MALKINI Puno, Peru

November 19, 2018

洋服作りの源流である農業の現場を伝えるFARMS。これから数回にわたり、10月に訪問したペルーのアルパカとコットンにまつわる話をお伝えする。特にアルパカに関しては、これまで日本のネット上で書かれてきた文献に書かれているものの中でもっともマニアックで詳しい内容のものになると思っている。

一回目はペルーを代表する企業の一つ、「Michell社」のMalkini牧場を訪問した時の話。

標高4,000m、面積3,000ヘクタール、アルパカ4,000頭

日本から15,000km以上離れたペルー。リマ国際空港から飛行機で向かったのは、ペルー第二の都市アレキパ。この都市はペルーを代表する産品の一つであるアルパカ産業の中心である。「ミッチェル」、「インカ」の二大アルパカ企業がここに本社を置き、町中はお土産用のアルパカ製品であふれている。今回、ここを訪れた10月後半に、4年に一度開催される「アルパカ・フィエスタ」が催された。その開催に合わせてペルーを訪問し、「ミッチェル」と「インカ」の両社を訪問して来シーズン以降の原料手配を行うとともに、この2社が運営する研究牧場をそれぞれ訪問し、アルパカについて学ぶことが今回の旅の目的であった。
標高2,000mに位置するアレキパから車で6時間、チチカカ湖の北、アンデス山脈を標高4,000mまで登ったムニャニ・ディストリクトにある「MALKINI」が今回の目的地の一つ。マイクロバスに揺られて走っている間に、酸素が薄くなってきたことを体感し始める。標高4,000mに近づくと頭のしびれを感じ始め、息苦しさに襲われた。高山病予防に使われる薬「ダイナックス」を前日から飲み始めていたおかげで、強い頭痛や吐き気に襲われることは無かったが、それでも酸素の吸引は欠かせない。20〜30分に一度吸う酸素が頭を楽にしてくれ、アンデスの奥深くに進んで行く車窓を辛うじて楽しむことができた。
辿り着いたのはミッチェルの研究牧場「MALKINI」である。ここではより良い品質の毛を生産できるようアルパカの遺伝研究と良質なアルパカの飼育を行っている。2000年に1,800頭のアルパカからスタートしたこの牧場では、現在4,000頭を超えるアルパカを約3,000ヘクタールの敷地で飼育。ここで品種改良と、より良い飼育方法、毛刈り技術などを研究し、地域の農家に教育を行う基礎としている。また、「MALIKINI」には小学校が併設されていて、アンデスの山中に暮らすアルパカ農家の子供達が寮で暮らしながら教育を受けている。農家を職業面、教育面で支えていくことで、社会貢献とともにアルパカの品質向上につながっているのだ。
牧場といっても山中にあるここは、施設周辺を除いてそのほとんどが自然の姿そままの。高山地帯らしく背の高い樹木はほとんど無く、辺り一面を”イチュー”という、ススキや枯れた芝生のようにカーキ色した植物が覆っている。この草の下に隠れて生えている”アルケミラ”という緑の草を食べてアルパカ達は暮らす。この草をアルパカ達が食べて、次にまた自然に生育するためにはアルパカ1頭に対して、1ヘクタールの土地が必要だという。ここでは自然に生える草以外にアルファルファを育てるエリアなどを作り、より効率的にアルパカの飼育ができる研究も行われている。
着いたのはもう夕方を越えていたので、この日は軽いオリエンテーションと従業員達が作ってくれる食事(ペルーに来て一番おいしかった)をご馳走になり終わった。

アルパカと毛刈り、その毛について

翌日、所長のモイセスさんのガイドで、牧場を回ることに。牧場と行っても、ここは大きな一つの牧場という訳では無く、メインの施設周辺の従業員が直接管理をする牧場以外に、この土地に暮らす農家家族が管理するいくつかの牧場が集合体として束なっているのだ。そのうち最初に見たのは、毛質の優れたホワイトアルパカを育てるエリア。天敵のいない高山地帯で育つからか、アルパカは羊ほど臆病ではない。こちらがじっとしていれば近くまで寄ってきて、人間を観察する。群れの近くでしゃがみ込み真剣に写真撮影しているとき、カメラからふっと目を上げるとアルパカの群れに囲まれていたといこともあるほど、警戒心は薄い。毛に触れることもできたが、上質なメリノウールのように柔らかく、その質の高さがすぐわかる。研究と品種改良の結果、ミッチェル社のアルパカのうち22%以上がベイビーアルパカよりもクオリティーが高いということだった。
 次に向かったのはスーリーアルパカのみを飼育するエリア。アルパカには毛質の違いで2種類がいる。一般的なアルパカは「ワカイヤ(Huacaya) 」、日本のテレビCMにも登場したアルパカだ。もう1種類は「スーリー(Suri) 」。直毛に近く、観賞用にかわれているものは毛が垂れ下がり地面に着くほど伸ばされている。数は圧倒的にスーリーの方が少なく、アルパカ全体の数%と言われている。ここにはブラウンやブラックの有色スーリーもいた。特にブラックに興味があった僕は、「ブラックスーリーを入手することはできる?」という問いを投げかけた。対する答えは、「イタリア人が買って、アラブに輸出するんだ」。つまり、とんでもなく高価で、買手も決まっているので、おまえの分は無いということであった。
 その後も周囲のいくつかの牧場を回り、この日だけで1,000頭以上のアルパカ鑑賞を楽しんだ後、最後に訪れたのはアルパカの毛刈り場。間もなくはじまる毛刈りシーズンを前に、毛刈りをするところを見せてもらえた。刈るのは、ここで一番毛刈りがうまいマウロ。一日8時間で100頭の毛を刈る。その速さは一頭あたり5分かからないほど。後ろ肢は紐で固定し、前肢と首をもう一人が押さえて暴れないようにして毛刈りを行うが、本当にスムーズであった。採れた毛の量は約4kg。一般的なアダルトのアルパカの毛の量である。ここから、洋服に使えるクオリティーの毛の採取量は約2kg。これが生後一年未満のベイビーになると半分の約2kgの毛が採れる。ちなみにアルパカのクオリティーを指すベイビーアルパカを「生後6ヶ月以内のアルパカから採った赤ちゃんの毛」と表現していることがあるが、これは間違いである。あくまでクオリティのことであり、一本の繊維の太さの平均値で呼び名が変わる。列記すると、最もランクの低いものから順にM.P.で29.5〜33.5㎛(マイクロメートル)、グリーサで34〜36㎛、ワリゾで30〜31㎛。ここまでは洋服には使われない。洋服に使われるクオリティーのスーパーファインで25.5〜26.5㎛、ベイビーは21〜23㎛である。さらに上のロイヤルは18.5〜19㎛でこれはウールのスーパー100’sの細さ、名前の付いている中で一番細いインペリアルは17.3㎛である。これは大人から採れたか、ベイビーから採れたかは関係なく、毛を選別する際に人間の手で確認してランク分けしている。ただ、ベイビーの方が細い毛が採れるというのは間違いない。
この牧場では品種改良の結果、より細い毛が採れるようになってきている。アルパカの毛は一般的にハイグレードなメリノウールやカシミアに比べて繊維が太い。近年ウールでは13㎛などの毛も採れるようになってきている。一般的なものでもエクストラスーパーファインメリノで17.5㎛だ。またカシミアは一般的なもので16㎛前後、ベイビーカシミアは13.5㎛前後である。それらに比べてアルパカはインペリアルで17.3㎛、ほとんど採れない極細で16.5㎛とようやくカシミアと同じくらい。しかし、アルパカとウール、カシミアは繊維の性質が違うため、一概に同じ太さだから同じような風合いということにはならない。アルパカの毛の表面を覆うスケールはウールやカシミアに比べて緻密で開きにくい。これによりウールやカシミアよりも光沢感と滑りを持った繊維となっている。また繊維の長さが他に比べて長く、糸にしたときにも肌に当たる繊維の先端部分が少なくなる。こういった特徴から肌に触れる感触はより柔らかさを感じやすくなる。たとえばアルパカスーパーファインの25.5㎛という太さは、羊毛であればニットに使うのはぎりぎりな繊維の太さで、首回りなどかなりチクチクと感じてしまう。しかしアルパカだと刺す感じはほとんどしないはずだ。ロイヤルを使えばカシミアのような柔らかさを感じるが、実際はカシミアよりもかなり太い繊維である。ついでにその他のアルパカの特徴を書いておくと、スケールの緻密さから、絡まりづらく毛玉が出来にくい。結果永く使える。またウールに含まれるラノリンやオイルを含まないためアレルギーが起きない。そして天然色が最も豊富で現在の分類でも22色に分けられている。ナチュラルカラーは染めずに使うため、素晴らしい風合いになる。
毛刈りを見た後、牧場の施設に戻り荷物をまとめ酸素吸引を行ったあと、所長のモイセスさんに別れをつげ、次の目的地であるインカ社の牧場に向かった。
次回は、ペルーのアルパカ産業を代表するもう一つの企業「インカ社」の研究牧場「Pacomarca」についてお伝えする。
 ※マイクロメートルは、0.1mm=100㎛、0.01mmで10㎛になります。
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標高4,000m、面積3,000ヘクタール、アルパカ4,000頭

日本から15,000km以上離れたペルー。リマ国際空港から飛行機で向かったのは、ペルー第二の都市アレキパ。この都市はペルーを代表する産品の一つであるアルパカ産業の中心である。「ミッチェル」、「インカ」の二大アルパカ企業がここに本社を置き、町中はお土産用のアルパカ製品であふれている。今回、ここを訪れた10月後半に、4年に一度開催される「アルパカ・フィエスタ」が催された。その開催に合わせてペルーを訪問し、「ミッチェル」と「インカ」の両社を訪問して来シーズン以降の原料手配を行うとともに、この2社が運営する研究牧場をそれぞれ訪問し、アルパカについて学ぶことが今回の旅の目的であった。
標高2,000mに位置するアレキパから車で6時間、チチカカ湖の北、アンデス山脈を標高4,000mまで登ったムニャニ・ディストリクトにある「MALKINI」が今回の目的地の一つ。マイクロバスに揺られて走っている間に、酸素が薄くなってきたことを体感し始める。標高4,000mに近づくと頭のしびれを感じ始め、息苦しさに襲われた。高山病予防に使われる薬「ダイナックス」を前日から飲み始めていたおかげで、強い頭痛や吐き気に襲われることは無かったが、それでも酸素の吸引は欠かせない。20〜30分に一度吸う酸素が頭を楽にしてくれ、アンデスの奥深くに進んで行く車窓を辛うじて楽しむことができた。
辿り着いたのはミッチェルの研究牧場「MALKINI」である。ここではより良い品質の毛を生産できるようアルパカの遺伝研究と良質なアルパカの飼育を行っている。2000年に1,800頭のアルパカからスタートしたこの牧場では、現在4,000頭を超えるアルパカを約3,000ヘクタールの敷地で飼育。ここで品種改良と、より良い飼育方法、毛刈り技術などを研究し、地域の農家に教育を行う基礎としている。また、「MALIKINI」には小学校が併設されていて、アンデスの山中に暮らすアルパカ農家の子供達が寮で暮らしながら教育を受けている。農家を職業面、教育面で支えていくことで、社会貢献とともにアルパカの品質向上につながっているのだ。
牧場といっても山中にあるここは、施設周辺を除いてそのほとんどが自然の姿そままの。高山地帯らしく背の高い樹木はほとんど無く、辺り一面を”イチュー”という、ススキや枯れた芝生のようにカーキ色した植物が覆っている。この草の下に隠れて生えている”アルケミラ”という緑の草を食べてアルパカ達は暮らす。この草をアルパカ達が食べて、次にまた自然に生育するためにはアルパカ1頭に対して、1ヘクタールの土地が必要だという。ここでは自然に生える草以外にアルファルファを育てるエリアなどを作り、より効率的にアルパカの飼育ができる研究も行われている。
着いたのはもう夕方を越えていたので、この日は軽いオリエンテーションと従業員達が作ってくれる食事(ペルーに来て一番おいしかった)をご馳走になり終わった。

アルパカと毛刈り、その毛について

翌日、所長のモイセスさんのガイドで、牧場を回ることに。牧場と行っても、ここは大きな一つの牧場という訳では無く、メインの施設周辺の従業員が直接管理をする牧場以外に、この土地に暮らす農家家族が管理するいくつかの牧場が集合体として束なっているのだ。そのうち最初に見たのは、毛質の優れたホワイトアルパカを育てるエリア。天敵のいない高山地帯で育つからか、アルパカは羊ほど臆病ではない。こちらがじっとしていれば近くまで寄ってきて、人間を観察する。群れの近くでしゃがみ込み真剣に写真撮影しているとき、カメラからふっと目を上げるとアルパカの群れに囲まれていたといこともあるほど、警戒心は薄い。毛に触れることもできたが、上質なメリノウールのように柔らかく、その質の高さがすぐわかる。研究と品種改良の結果、ミッチェル社のアルパカのうち22%以上がベイビーアルパカよりもクオリティーが高いということだった。
 次に向かったのはスーリーアルパカのみを飼育するエリア。アルパカには毛質の違いで2種類がいる。一般的なアルパカは「ワカイヤ(Huacaya) 」、日本のテレビCMにも登場したアルパカだ。もう1種類は「スーリー(Suri) 」。直毛に近く、観賞用にかわれているものは毛が垂れ下がり地面に着くほど伸ばされている。数は圧倒的にスーリーの方が少なく、アルパカ全体の数%と言われている。ここにはブラウンやブラックの有色スーリーもいた。特にブラックに興味があった僕は、「ブラックスーリーを入手することはできる?」という問いを投げかけた。対する答えは、「イタリア人が買って、アラブに輸出するんだ」。つまり、とんでもなく高価で、買手も決まっているので、おまえの分は無いということであった。
 その後も周囲のいくつかの牧場を回り、この日だけで1,000頭以上のアルパカ鑑賞を楽しんだ後、最後に訪れたのはアルパカの毛刈り場。間もなくはじまる毛刈りシーズンを前に、毛刈りをするところを見せてもらえた。刈るのは、ここで一番毛刈りがうまいマウロ。一日8時間で100頭の毛を刈る。その速さは一頭あたり5分かからないほど。後ろ肢は紐で固定し、前肢と首をもう一人が押さえて暴れないようにして毛刈りを行うが、本当にスムーズであった。採れた毛の量は約4kg。一般的なアダルトのアルパカの毛の量である。ここから、洋服に使えるクオリティーの毛の採取量は約2kg。これが生後一年未満のベイビーになると半分の約2kgの毛が採れる。ちなみにアルパカのクオリティーを指すベイビーアルパカを「生後6ヶ月以内のアルパカから採った赤ちゃんの毛」と表現していることがあるが、これは間違いである。あくまでクオリティのことであり、一本の繊維の太さの平均値で呼び名が変わる。列記すると、最もランクの低いものから順にM.P.で29.5〜33.5㎛(マイクロメートル)、グリーサで34〜36㎛、ワリゾで30〜31㎛。ここまでは洋服には使われない。洋服に使われるクオリティーのスーパーファインで25.5〜26.5㎛、ベイビーは21〜23㎛である。さらに上のロイヤルは18.5〜19㎛でこれはウールのスーパー100’sの細さ、名前の付いている中で一番細いインペリアルは17.3㎛である。これは大人から採れたか、ベイビーから採れたかは関係なく、毛を選別する際に人間の手で確認してランク分けしている。ただ、ベイビーの方が細い毛が採れるというのは間違いない。
この牧場では品種改良の結果、より細い毛が採れるようになってきている。アルパカの毛は一般的にハイグレードなメリノウールやカシミアに比べて繊維が太い。近年ウールでは13㎛などの毛も採れるようになってきている。一般的なものでもエクストラスーパーファインメリノで17.5㎛だ。またカシミアは一般的なもので16㎛前後、ベイビーカシミアは13.5㎛前後である。それらに比べてアルパカはインペリアルで17.3㎛、ほとんど採れない極細で16.5㎛とようやくカシミアと同じくらい。しかし、アルパカとウール、カシミアは繊維の性質が違うため、一概に同じ太さだから同じような風合いということにはならない。アルパカの毛の表面を覆うスケールはウールやカシミアに比べて緻密で開きにくい。これによりウールやカシミアよりも光沢感と滑りを持った繊維となっている。また繊維の長さが他に比べて長く、糸にしたときにも肌に当たる繊維の先端部分が少なくなる。こういった特徴から肌に触れる感触はより柔らかさを感じやすくなる。たとえばアルパカスーパーファインの25.5㎛という太さは、羊毛であればニットに使うのはぎりぎりな繊維の太さで、首回りなどかなりチクチクと感じてしまう。しかしアルパカだと刺す感じはほとんどしないはずだ。ロイヤルを使えばカシミアのような柔らかさを感じるが、実際はカシミアよりもかなり太い繊維である。ついでにその他のアルパカの特徴を書いておくと、スケールの緻密さから、絡まりづらく毛玉が出来にくい。結果永く使える。またウールに含まれるラノリンやオイルを含まないためアレルギーが起きない。そして天然色が最も豊富で現在の分類でも22色に分けられている。ナチュラルカラーは染めずに使うため、素晴らしい風合いになる。
毛刈りを見た後、牧場の施設に戻り荷物をまとめ酸素吸引を行ったあと、所長のモイセスさんに別れをつげ、次の目的地であるインカ社の牧場に向かった。
次回は、ペルーのアルパカ産業を代表するもう一つの企業「インカ社」の研究牧場「Pacomarca」についてお伝えする。
 ※マイクロメートルは、0.1mm=100㎛、0.01mmで10㎛になります。
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