デザイナー石川俊介は「メンズのセーターにもっとも適した素材はシェットランドウールだ」と言い切ります。毎シーズン、ニットにして使っているこのシェットランドウールを贅沢に使ってツイード素材を作りました。シェットランドウールは、柔らかさとコシのバランスが良く、縮れが多いのが特徴です。そのため嵩高で、軽く作ることができるのです。
さらに空気を多く含むので保温性にも優れているなど、いいこと尽くし。ただし、かなり希少なことでも知られています。シェットランドウールとはシェットランド種の羊でかつシェットランド諸島で育ったものから刈り取った毛を指すのですが、冬場は牧草がないため海藻を食べさせていると言われるほどの厳しい環境で育っているため、生育数が圧倒的に少ない。
日本でシェットランドウールと言われているものの多くは、実はオーストラリアのウールに英国羊毛を少し混ぜてバルキーニュアンスを出したものです。これは、かつてイギリスの糸商がシェットランドという商標で出していたため、日本でこの誤った素材がシェットランドウールとして広まってしまったというわけです。
MARKAWAREでは、本物のシェットランドウールでツイード素材を作り上げました。難しいとされる動物性の繊維にインディゴ染めをしたことで、デニムと同じような脱色効果も楽しめます。バルキーな質感と、粗い部分を混ぜて使っているので立体的で面白い生地に仕上がりました。
いま世の中の傾向としては、生地は軽いことがよしとされていますが、本来のツイードはガチガチに硬く織られたものが一般的です。かつて貴族はツイードのコートを購入したら、自分の体型とおなじ召使を雇って彼にしばらく新品の硬いジャケットを着せて、ほどよく馴染んだころあいで自分が着る、などという逸話も残っているほど。
その厚みや硬さからツイードは、ソーンプルーフ(とげから守る)とも言われ、茂みの中でトゲ化の植物から肌を守るための機能を持った素材でした。この生地は、イギリスのソーンプルーフツイードと同じ本数で打ち込んでいます。
こちらは、パッチポケットが印象的なブレザーです。毛芯からきちんと作ったテーラードジャケットです。素材のよさを体感できるよう、デザインはごくごくシンプルに。パッチポケットは中縫いで表にステッチがでないようにすることで可愛らしさを出しました。
このジャケットは、2016年春夏からはじめた「和」の要素を取り入れたもの。シャツとカーディガンの中間的なデザインが特徴です。
前ボタンを留めるとダブルのジャケット風にも見せることができ、着こなしの幅を広げてくれます。ジャケットではありますが、カーディガン感覚でさらっと羽織ることができるアイテムです。
ガウンコートは、フロントにあえてボタンを設けず、ウエストは帯だけで絞るように設定。直線的なシルエットが着こなしに「和」のニュアンスをプラスしてくれます。
そして、一番人気がこのワンタックパンツ。ウエストにゴムを仕込んでいるのでイージーに穿けるパンツです。クロップド丈なので買ったらすぐそのまま穿ける点も支持を集める理由のひとつです。
Text : Aiko Futamata