「今季は特別なキーワード、テーマを設けずに、MARKAWAREの原点に立ち返ることを意識しました」とデザイナー石川俊介が語る、MARKAWARE 2015秋冬コレクション。得意とするミリタリーは残しながら、「よい素材、よい縫製でちゃんと作られた綺麗な洋服のため、素材作りからしっかりと取り組みました」との言葉通り、それぞれのアイテムは上品さをたたえた仕上がりになっています。

ルックブックの製作に携わったのは、スタイリスト二村毅さん、フォトグラファー岡田潤さん。二村さん自身による全ルック解説、今回が最終回です。

 

LOOK 20

二村：ひとつ迷彩のスーツを出したいと思って考えたコーディネートです。白ではなくグレーがかったタートルネックに、カーキのセーター。そこにスーツを着てスニーカーで。タイドアップではなく、僕らが考えるモダンなスーツの着かたというつもりでこのスタイリングは作っています。

 
LOOK 21

石川：ロング丈のスノーパーカーシャツとコートのレイヤードですね。

二村：さらに中にはタートルネックを着ています。こういう感じも好きなんですよ。タートルネックにシャツという組み合わせ。ただ、そのときにドレッシーなシャツだと印象が固すぎると思うんですよね。しかし、このロングシャツなら柔らかさも出せる。

— ロングシャツありきのレイヤードだったんですね。

二村：そうです。さらに、シャツとコートのコンビネーションも良かった。パンツもグリーン系のグラデーションにしてもよかったんですが、この白いチノもキレイでリアルだったのでこちらにしました。

 
LOOK 22

二村： Gパンとチェスターコートの合わせには自分のなかで普遍的な何かがあるんです。今シーズンの気分で、その普遍性を表現したのがこのルックですね。チェスターコートにインナーダウンを着て、薄いセーターと合わせる。あたたかくていいと思います。実際にこの格好で街を歩いても、どこかお店に入ってコートを脱いでも、どちらの場面でもさまになる。このレイヤードはいいと思いますよ。

 
LOOK 23

ー さらり、と。シンプルなコーディネートで、品の良さが際立ちますね。

二村：LOOK 18で登場したグレーの半袖カットソーも良かったんですが、この長袖も素晴らしい。セントジェームスのバスクシャツのようなムードで、秋口にざっくりと着るカットソーとしてピッタリのアイテムです。パンツは紺の迷彩を履かせています。このさりげない迷彩パンツもいいんですよね。僕も履きたいと思いました。ネイビーにホワイトのクリーンなコンビネーションにくわえ、アイテム自体の力でスタイリッシュに見えるコーディネートですね。

 
LOOK 25

— LOOKの前半ではコートとの合わせで目立っていた畦編みのセーターですが、ミリタリーにも似合いますね。 

二村：L-2Bですね。この畦編みのセーターとタックパンツ。シンプルですし、大人っぽいアイテムの合わせなんですが、大人はもちろん10代の子が着ていても全然カッコいいと思います。靴はすごく迷いましたが、ジップの付け根のベージュをピックアップする形でリンクさせています。

 

LOOK 26

二村：このシンプルさ、最高ですね。いままでインに着せていくつかのルックに出てきている畦編みのセーターですが、ここでしっかり見せました。

ー このセーターは、指を入れずに手首あたりで折り返して着てもいいんですか？ 

石川：いいと思いますよ。折り返すことも考えてデザインしています。

 

LOOK 27 

二村：こういうミリタリー系のハードなアウターには綺麗なパンツがいいという原則にのっとり、スラックスを合わせたコーディネートなのですが、合わせたところやはり素晴らしかったですね。中に着る服は悩んだんですが、やはり今シーズンは畦編みのセーターで。トップスが重厚な印象なので、足元は白いスニーカーで抜いて上品に。

 

LOOK 28

ー これが最後のルックです。

二村：石川さん、これはスーツとしての提案でしたよね？

石川：そうです。ネイビーとブラックの大判のチェックなんですが、太陽の下でやっと見えるか見えないか程度の差しかないので、ネイビー一色かブラック一色に見えると思います。

二村：僕の個人的な気持ちとしてネイビーのセットアップが着たいとずっと思っているんですよ。そしてセットアップにこの畦編みのセーターで少しニュアンスを差し込んだ感じというのは本当にオシャレだなと思って、これにしました。

— ありがとうございます。これで全てのコーディネートを解説していただいたわけですが、振り返っていかがですか？

二村：毎回MARKAWAREの洋服はいいと思っているんですが、今シーズンの洋服もいいですね。やっていて、「うーん、これをどう着せよう」というストレスが全くない。今季のコレクションでは、ギミックに凝った服というのはそんなに多くないんです。でもそれがギミックだったかなと。そのうえで、シャツをちょっと減らした秋口から冬にかけての服装をどうしましょうかという提案になっています。

ー　二村さんが今シーズンよくおっしゃっていた上品さというのは、今シーズンのMARKAWAREに関した部分ですか？

二村：今シーズンの洋服について石川さんから伝わってきたのはそういうことかなと。ラギッドとかヘリテイジとか、そういう匂いをそんなに出さないコレクションを一度できないだろうか、ということを感じたんですよね。そういう意味ではいつもより匂いの薄いモデル、ハードだったりナイーブだったりというキャラクターが前面に出てこないモデルを選び、コーディネートもシンプルになった分、品の良さということは全体を通して出ているでしょうね。

— それは、次の秋冬を考えたときのキーワードとしても言えることですか？

二村：世の中全体としては、もう非常に細分化しているので「キーワードは”上品”です」とは言えないんですけど、このルックとしては上品な装いというのは素敵じゃないですかという提案になっていますし、MARKAWAREの今シーズンの服がモダンな上品さの象徴として引用されることになったら良いと思います。

ー　とても落ち着いたファッションで、大人っぽいという印象です。

二村：ストリートで拾ってきたような匂いは一切合切省かれているので、そういう要素はないかもしれませんね。若者のファッションにありがちな、キャップをかぶるとか、眼鏡をかけるとか、わかりやすいアイコン的なことで見せるディレクションではありませんから。でも、今シーズンのルックは、正々堂々と、ど真ん中のファッションを提案したものになっていると思います。18, 9の若者たちにも、胸をはってこれがカッコイイんだとアピールしたい。

石川：自分自身も年齢のことは考えてないですね。もちろん大人が着てさまになる服ではあると思いますが、若い人が着て物足りなさを感じるようなものでもないと思っています。

二村：コトバは悪いですけど、今回のスタイリングでは若い子たちに対して挑発的にやれたなという手応えがありますね。“このカッコ良さがわかる？”という部分ですね。強い芯のある、提案性のあるルックになっていると思いますし、この服を若い人たちが着ることで良い化学反応が起きるんじゃないかなとも思います。