タイガーストライプ。米軍モノの中でも謎が多く面白い生地です。
インドシナを占領していたフランス軍の迷彩をベトナム海兵隊が採用してオリジナル柄を作り、その後米軍特殊部隊がいろいろなバリエーションを作っていった豊富な種類を持つ柄です。
1999年にアメリカでリチャード・デニス・ジョンソンという人が各種の古着を集め研究・分類して書籍にまとめました。現在でも唯一のタイガーストライプに関する専門書で、この分類がスタンダードになっています。しかしもともと日本ではシルバー、ゴールドやオキナワパターンなどの通称で分類して愛されていましたので、今でも古着屋さんではこちらの呼び方の方が一般的かと思います。シルバーやゴールドなどの呼び名は当時使用していた顔料の質があまり良くなく金色・銀色風に褪色していくことで付いたもの。オキナワはタイガーストライプの多くが日本で作られたもので、沖縄を経由して戦場に運ばれていたことからついた通称です。
素材の生地感、柄も異なれば、縫製仕様、細かなディテールなどもいろいろなバリエーションがあり、褪色の仕方にも個体差がありそれがそれぞれの個性となって古着としての魅力が高まっています。
MARKAWAREではこのタイガーストライプをなるべく忠実に再現しました。手元の古着を参考に起こしたオリジナル柄を作り顔料プリントを入れています。ベースにしたのは、リチャード・デニス・ジョンソンの分類でいうところのJWS(Jhon Wayne Sparse Pattern)です。柄の美しさでは数あるタイガーストライプの中でも最も良いと思っています。生地も当時の雰囲気に少しでも近づけるために、産業資材に使われているセルビッチツイルを探してきました。オリジナルのタイガーストライプの多くも日本で織られたセルビッチの綾織物で作られており、おそらく作業資材に幅広く使われていた生地を流用したものだと思います。本物には様々な種類の生地があり、規格を定めて作っていたというよりは、その時々に手に入るツイル(ドリル・葛城)を使用してプリントを施していたと思われます。今回使用した生地もそんな考え方でピックしたモノですが、当時のものに比べると糸質が良くなり綺麗な仕上がりです。しかしセルビッチ部分にまでプリントがのったいい生地が出来上がっています。
この生地を使って、ジャケット・パンツを二型ずつ作りました。
ジャケット一型目はベトナム戦争期を代表するジャングルファティーグジャケット。marka、MARKAWAREでは定番的に展開していたアウターです。
二型目はゴールドタイガーなどに多く見られる形の3ポケットシャツです。
パンツもタイガーストライプといえばこの形の7ポケットのパンツ。これもジョンウェインよりは後のゴールドなどに見られるパンツです。
そして最後は古着からそのまま形を抜いたショーツ。
それぞれのアイテムで縫製仕様にもいろいろ変化を加えています。米軍のMILスペックの服を縫っていた工場にはいろいろな設備が揃っており、主要な接ぎはすべて巻カン縫いで、ちゃんと閂(かんぬき)などを入れて縫われています。しかし、ローカルなど小規模な工場で縫われたタイガーストライプは設備が少なくほぼ本縫いミシン一台で全てを縫ってしまっています。そこで、ファティーグは巻き縫い、3ポケシャツは伏せ縫いなどアイテムによって縫製仕様を変えています。是非洋服の裏側もご確認下さい。
インパクトの強い柄で着こなしが難しいと思われるかもしれませんが、ダークネイビーやブラックの綺麗なアイテムとあわせて着てもらえば、綺麗になりすぎるコーディネートにアクセントを加えられます。