春物アウターの第二弾がいろいろと入りはじめました。そんな中でも発売前からご好評頂いている通称「JUNGLE FATIGUE JACKET」を少し詳しくご紹介いたします。
MARKAWAREをはじめる前、まだmarka BLACK LABELとしてミリタリーアイテムを作っていた頃に最初のジャングルファティーグジャケットを作り、ブランドを象徴するアイテムとして好評いただいていました。しかし、ここ数年はミリタリーアイテムをあまり作らない期間が続いていました。ところが、15年春夏のテーマを「FATIGUE」としたことで、絶対につくらないと行けないアイテムとして浮上してきました。「久しぶりにファティーグを作るのなら以前と同じ物はいやだ。よりクオリティーの高いものにしたい」と考え、素材から作り直しています。
それでは、まずは素材の説明から。ジャングルファティーグの素材には大きく分けて2種類あります。初期に使われていた平織りのポプリン素材と後期に使われたリップストップ素材。ジャングルの中で破れやすいという理由で60年代末に変更されました。MARKAWAREのジャングルファティーグに使っているのは初期型のポプリン素材です。最初期型のジャケットの素材を調べた結果、経糸(たていと)は40番手程度の双糸(二本よりの糸)を使用しているのに対して、緯色(よこいと)は自然なムラ感のある単糸を使用しています。通常ならこの手の素材は同じ程度の番手(太さ)の糸を打ちます。ということで以前作っていた物は20番単糸を使っていたのですが、どうも肉感が薄い気がしていました。糸の打ち込み本数も本物に揃えていたのですが何か違う感じで、さらにはムラ感がないと本物の持つ雰囲気に近づきませんでした。そこで、今回はほんの少し太くした19番のムラ糸に変更しています。それも普通の綿では面白くないので、ニューメキシコで栽培されたオーガニックコットンを使用。本物の生地の糸本数をカウントしてみたところ、経糸はだいたい1インチあたり100本で、緯糸は54〜6本くらいです。これをもとに、今回の生地は経糸を100本で揃え、緯糸を56本にしました。
織ってもらったのは大阪の中川織布。ここでは今でも旧式の力織機を使って、白衣などに使うポプリン素材を生産しています。初期のファティーグジャケットも旧式の力織機の生地で作られており、身頃続きの見返し(フロントの明き部分の裏側のパーツ)は生地の耳を使用していますので、この耳付き生地にする必要がありました。
この生地をスレン染料を使ってオリーブグリーンに染めています。軍物のカーキ色やオリーブ色は堅牢度の高さなどの理由からスレン染料が使われます。ファションの世界では、ミリタリー調のオリーブ色の洋服を作るときに、なるべく早く風合い出しを行えるように硫化染料を使用することが多いのですが、問題があります。硫化染料のオリーブ色は黄色よりに褪色していきます。ヴィンテージの米軍もののような色合いからどんどんと離れて言ってしまいます。永く着てもらうことを考えるとスレン染料で染めてゆっくりとした自然な褪色を楽しんで貰いたいと思っています。
こうして作り上げた素材ですので、縫製にもこだわってみました。古着を詳細に見ていろいろと再現しています。
例えば手元にある最初期のジャケットは身頃や袖の接ぎの巻き縫いに2種類のミシンが使い分けられています。わずかに違うゲージ(二本針ミシンの針と針の間隔)のミシンで、おそらくは縫製した工場でたまたま組んだラインがそうなっていただけだと思いますが、面白いのでここも再現しています。ちなみに袖付けが16分の3ゲージ(約4.8mm)、脇接ぎが16分の4ゲージ(約6.4mm)にしています。
襟付けのステッチも通常は綺麗にみせるために洋服の表側から縫うのですが、古着では裏側から縫っています。それも大量生産で素早く縫わないといけないので、表側はステッチが衿から外れたり乗ったりと決して綺麗とは言えない縫い方になっています。これもあえて再現しています。
その他ポケットフラップのペン差し部分の裏側など効率化のための面白い仕様などもそのまま再現しています。
使用した釦は碁石釦と呼ばれる形状の尿素釦です。前期型に使用されている光沢のある釦に別注色を付け、ブランドロゴを刻印しました。
最後に形について。まずジャケットは前期型と呼ばれる1st、2ndモデルを参考にしています。後期型(3rd、4th)と比べて手の込んだ作りにです。後期型との違いは、エポーレットが着いている、ウェスト絞り用のタブがある、ガスフラップ(フロント上前の内側についているフラップ)がついている、ポケットの底マチにドレンホール(菊穴の水抜き)がついているなど、より多くのパーツが付いています。
これらを「ズバリ」で再現しながらシルエットを変更しています。一つは少しタイトにしたもの。もう一つは少しワイドにしたもの。
パンツはこの写真の最初期のモデルをベースにして細めのシルエットに変更しています。そろそろカーゴパンツも履きたい気分が自分の中でも盛り上がってきていますので、この春はこのパンツをがんがん履いて、がんがん洗って育てていきたいと思っています。
この週末にはPARKINGおよび全国の取り扱い店舗に入荷予定ですので、是非実物をご覧下さい。
Text & Photo : Shunsuke Ishikawa