ブランドが作る洋服が着る人の手元に届くまでの間を結ぶ物流は、ファッションにおいて非常に重要な役割を担っています。埼玉県三郷市にあるVISION LOGISTICSは、アパレルブランドの物流業務を請け負う会社。2013年春夏シーズンから、MARAKAWARE / markaの洋服もここVISION LOGISTICSを経て全国のショップに出荷されています。創立は2004年とまだ若い会社ですが、多くのドメスティックブランドに厚く信頼され実績を上げている、その理由を代表の今井篤史さんに伺いました。
—— 洋服が好きな方でも物流のことまで詳しく知っている人は少ないと思います。実際にどういったことをなさっているのか教えてください。
簡単にお話しすると、ブランドさんが工場に依頼して作った洋服は、ショップやブランドに直接送られるのではなく、まず弊社の倉庫に入ります。そこで届いた洋服を僕らが外観のチェックや針が混入していないかといったチェックを行い、ブランドさんからの指示に従って全国のショップへ商品を梱包して発送するという仕事ですね。本来、ブランドさんがやらなければいけないことは良い商品を作ってそれを売るということですが、実際は発注や在庫管理といった作業に追われてしまって本来の服作りや営業に力が回らないという声をよく耳にします。そこで僕らがそれを代行することで、安心して洋服作りと販売に力を注いでいただきたいという気持ちで日々の仕事をしています。なので、会社こそ違いますが、ブランドさんとはチームみたいな感じでやらないとうまくいかない仕事だと思っています。
—— 会社の設立は2004年ということですが、今井さんはこの会社を始める前はどういうことをされていたのでしょうか?
まったく同じ業種で、もっと量販に近いところで仕事をしていました。大手のスーパーやファストファッションに近い、物量が多いところでしたね。物流の仕事というのは基本的には多くの洋服をどんどん動かすことで利益を上げる仕事ですが、以前の職場ではとにかく量をこなして売り上げを取るセクションと、ストリート向けの洋服で量はさほど多くないまでもしっかりと洋服を見るセクションが分かれていたんですね。そこで僕は後者のセクションをアルバイトを使いながら管理していたんですが、もともと洋服が好きだったことと、当時の自分の30歳くらいという年齢を考え、一念発起して独立を決意しました。
—— 取り扱いのブランドは国内での人気ブランドが多いですね。東京を拠点に活躍されている比較的若いブランドが多いように感じます。
そうですね。僕が独立したころに設立されたようなブランドさんも多いです。数で言うと80ブランドくらいですね。ウチは量がどうという会社ではないので、他の物流会社に比べると独特かもしれませんが、ひとつひとつの洋服を丁寧にきちんと見るということをやらせていただいていますし、小規模なブランドを応援したいという気持ちが強いので。
—— そうすると、展示会にも顔を出されているんですか?
はい、行きます。たくさんオーダーがついてくれ、とブランドさんと同じ気持ちでいます。気持ちをこめて仕事をするのには、やっぱりそのブランドや洋服を好きにならないとできないですからね。良い服が作れる国内の工場は限られていて、タイトなスケジュールの中で洋服があがってくる状況はずっと続きますから、僕らが出荷の部分で調整するしかない。そこで気持ちがつながっているブランドだったら、やっぱり今日中になんとか!という仕事でもみんなで力をあわせて頑張る雰囲気になりますよね。
—— いまは何人くらいでやってらっしゃるんですか?
パートさんを入れて40人くらいですね。年齢層としては若いと思います。それからこれは僕の教育というかポリシーなのですが、みんな洋服が好きです。普通、倉庫での作業というと汚れてもいい洋服を着てだらしなくなりがちですが、「良い服を着て仕事をしましょう」と声をかけ続けて、いまではみんなすっかりオシャレになりました。みんながしっかりした服を着ているので、近所のコンビニでは「どういうお仕事をされている方なんですか?」と聞かれることもありましたし、夏はパナマハットを被って仕事をしていますよ。物流の会社としては異質ですね。
※前編ここまで。次回ではさらにVISION LOGISTICSの哲学、MARKAWARE / markaとの出会いについて聞いています。
Photo & Text : Tsuzumi Aoyama