2014F/WのMARKAWAREは、天然素材にこだわったコレクションを展開。ベンタイル、ローデンクロスやSuper 120’Sウールのメルトンなど、豊かな風合いをもちながら着込むほどに肌に馴染む洋服が揃います。このコーナーではデザイナー石川俊介にそれぞれの素材、洋服に注ぎ込んだこだわりを聞きます。
石川:ミリタリーはMARKAWAREの立ち上げから大事にしている、ブランドの柱のひとつです。そこから製作した今シーズンのヘヴィーアウターが、このA2ジャケットです。デザインのベースは1930年代初期に採用された、米陸軍航空隊のフライトジャケット。そこに、同時代の海軍航空隊に採用されていたG1ジャケットの特徴をプラスしています。
— 今まではブランドとしてはG1が多く、A2はあまり作ってこなかったそうですが。
石川:G1は素材にマウンテンゴートのゴートスキンを使うのですが、これが国内では良いものが手に入りにくくなってしまいました。なめし工場の廃業などもあり、以前作っていたものが今は作れません。しかしながら素材のクオリティーは落としたくないということで、良質なホースハイドを使うことのできるA2ジャケットとのハイブリッドなフライトジャケットを作ることにしました。
— 色はブラウンとブラックの2色ですか?
石川:そうです。ブラウンはオリジナル(1931年に正式採用されてから第二次世界大戦終了の1945年まで飛行士たちに愛用されていました)の当時のカラーリングを再現。ブラックはオリジナルのカラーリングです。ホースハイドの特徴である照りがもっともよく表現できるカラーですね。
— ディテールでは首周りのムートンがリッチな印象です。
石川:この部分はG1をイメージしてビーバーラムを使用しています。冬のはじまりから、厳寒期まで長く着ていただけるように、襟はファスナーによる着脱式です。スタンドカラージャケットとしても着用できます。
— ルックスはスマートですが、着ると身頃にはすこし余裕がありますね。
石川:そうですね、着心地を考えてややゆとりを持たせています。また、これもG1のディテールですが、肩の後ろには深めのアクションプリーツを入れているので腕は非常に動かしやすくなっています。
— オリジナルのA2はフロントのポケットにはハンドウォームポケットがなく、また、形も角ばった長方形だったと思いますが。
石川:その通りです。ここにはデザイン的な遊びの要素を入れてみました。パッチポケットを埋め込みに変更して、形も丸みを持たせています。
石川:ハンドウォームポケットも、街着としての利便性を高めるために追加しています。デザインとしても立体感が生まれて面白い表情になったと思います。ほか、ジップの定番はTALONですが、暑くなったときに下からも開けられるようにしたいということで逆開が可能なriri製に。また裏地もブラウンのタイプに限り、G1で使用されていた赤いサテンのイメージで、シャイニーなレッドを採用しています。オリジナルのA2の無骨さを残しながら、遊びやモダンな味つけとして単純に現代的な要素をプラスするのではなくG1のディテールを混ぜ込むことで、男らしくミリタリーの魅力を残したアイテムが出来ました。
Photo & Text : Tsuzumi Aoyama