デザイナー石川俊介はもちろんですが、MARKAWAREの生産チームスタッフも自分たちで創りだした洋服には思い入れがたっぷり。彼ら自身が日頃愛用しているアイテムについて、その生産背景も含めて紹介してもらいます。第1回は生産チームの木村さん。2013年に製作したシャンブレーシャツについて。
— このアイテムについて教えてください。
木村:MARKAWAREで定番として使用していた、綿100%のシャンブレー生地があるのですが、そのヨコ糸をシルクに打ちかえて作ったオリジナルの「綿シルクシャンブレー生地」のシャツです。一番の特徴はシルク混による光沢感ですね。ワークシャツの雰囲気もしっかりと残しながら、ドレッシーな雰囲気も出しています。今日、僕が着てきたシャツはだいぶ色落ちが進んできましたが、まだしっかりとした光沢感が残っていて、良い感じに育ってきたという印象です。
— このシャツが、ワークのこなれ感とドレスの高級感という良いところを兼ね備えているあたりには、生地だけでなく縫製も影響していますか?
木村:このシャツは岡山の「総社縫製」で縫製を行っています。もともと総社縫製さんはドレスシャツの縫製で高く評価されていた工場なのですが、2008年ごろからカジュアルウェアも作りはじめました。ヴィンテージのワークシャツに見られる3本針での巻き縫いという縫製をすることができます。
木村:上の写真は縫製工場で実際にこのシャツを縫ってもらっているところです。このシャツでいうと袖付け、脇、それから背中心の縫い合わせの部分を3本ステッチで仕上げています。もともと着たときに引き裂きが起きやすい場所を丈夫にするための仕様ではありますが、転じてワークシャツのアイコンとして、デザイン上の要素としても機能していますね。
木村:アイコンといえば、MARKAWAREのシャツはバックヨークをアーチ型に仕立てていますがここは1cm幅の折り伏せ縫いです。袖からヨークを通って反対の袖先までを一気に縫う仕様で、これにより脇のハギと袖の内ハギの位置をずらすことができて、腋のゴロつき感がなくなると同時に、袖に綺麗なカーブを作ることができます。それから、このシャツをドレッシーに見せている隠れたポイントが、裾の3mm幅細巻きステッチです。
— ステッチを細幅にすることで、裾に細かく綺麗なアタリが出ていますね。
木村:デニムパンツの裾同様、こういう部分にアタリが出てくると愛着がわきますよね。もとの生地と見比べると、もうずいぶん色は落ちてしまっていますが、その代わり襟や前立てといった部分には美しいアタリが出てきました。それが単なる劣化で終わってしまうのか、いい味として好ましいものになるのか、違いを生み出すのはやはりそもそもの洋服作りという部分でどこまでこだわり、ディテールの一つ一つを追求していくことだと思っています。このシャツは数年前のものなので、もう店頭にはありませんが、他のMARKAWAREの商品も同じように丁寧に作りこんでいますので、長く着て楽しんでいただけると思います。
Photo & Text : Tsuzumi Aoyama