今年5月のことです。中目黒のPARKINGにて行われた顧客さま向けの受注会にて、MARKAWAREの定番アイテムであるオックスフォードボタンダウンシャツの個人別注を受けつけていました。MARKAWAREではこのオックスフォードシャツは白またはブルーのベーシックなカラーで展開していますが、そのシャツをそれぞれの方が好きなオリジナルカラーに染めるというもの。ご好評とともに多数のオーダーをいただきましたが、いよいよそのシャツもお渡しできるところまで来ました。
ベースにするのは冒頭の写真の白のボタンダウンシャツです。詳細は過去の生地をご参照いただきたいところですが、まずは少しだけこのシャツへのディテールをご紹介します。
ラウンドしたヨークは男の背中を飾りながら、強度を確保するという必然から生まれたデザインです。また、背中心にもパッカリングを効かせて上品さのなかにワークの趣きもプラス。
袖をまくりあげると、剣ボロの丁寧な仕立てを見ることができます。剣ボロはアメリカのクラシックなシャツを踏襲し、手間はかかるもののしっかりと強度を確保できるよう一枚の布で挟みこんで縫いあげています。また、裏返して頂くと丁寧な縫製の証しである「カンガルー」と呼ばれる始末をしています。
ステッチは限界まで細かくし、また胸ポケットやスソの終端では生地の折り返しギリギリを縫いあげることで、(難しい技術で、生産効率もおちてしまいますが)、上品さを際立たせています。ボタンもひとつひとつお針子さんの手による手付けです。
ガゼット部分には旧式力織機で織られた生地の証であるセルビッチ部分を使用しています。
さて、このMARAKAWARE定番のオックスフォードシャツをお好きな色に染め上げるという今回の企画に戻りましょう。今回ご指定いただけるのは色のみということで、みなさん思い思いの方法で色を指定していただきました。お気に入りの洋服を持ってくる方、雑誌の切り抜きを見せてくださった方。それぞれのオーダーのカラーを持って、染工場さんと打ち合わせを行いました。まずは「ビーカー」と呼ばれる色見本を作成します。これは染色のテストのために小さいビーカーで糸を染めることからそう呼ばれています。
ひとつひとつのオーダーをしっかりとデータとして蓄積するため、ビーカーもきちんと作成しました。これは生産チームで保管します。色を決めたあとはいよいよ染色です。
ネットに入れたシャツを染色の機械に投入します。まだこの段階ではシャツは白のままです。それぞれのオーダーにあわせて調合した薬品で、シャツを染め上げます。
ネットから取り出すと、しっかりと染め上がったことがわかります。みなさんのオーダー毎に色は違うため、ひとつひとつ手作業で丁寧にチェックしながら、薬品を洗い流し、仕上げの工程へと入ります。
仕上がったシャツがこちら。オックスフォードの生地感とあいまってどのシャツも品良く仕上がりました。
さて、今回のシャツは顧客様向けの別注アイテムということで、専用タグと化粧箱を用意しました。ブランドカラーのグレーのチップボール紙を使用し、角留めという古い箱に使用されていたステープルで留めた専用箱です。
世界に一着しかないオリジナルのMARAKAWARE。タグにはオーダーしていただいた方のお名前を入れさせていただきました。長く愛用していただければ幸いです。
Composition & Text : Tsuzumi Aoyama