大人の男性のための上質なリアルクローズを提案するMARKAWARE。メイドインジャパンの優秀なものづくりに支えられて生み出されるアイテムたちは、長く着こんだときに独特の「味」をもちはじめます。その一端を、生産を担当している寺田典夫さんへのインタビューでご紹介します。今回のテーマは、お客さまが修理のためにショップに持ち込まれたデニムのリペアです。
Item Data
アイテム名:50’S セルビッチデニム
シーズン:2011S/S
購入時期:2011年の2月頃
着用期間:3年
使用頻度:週に5日
洗濯頻度:計4回(購入時に糊落としの1回と、年に1回)
—— お客様が穿きこんだものの修理ということですが、そもそものデニムの詳細を教えてください。
寺田:しっかりとした打ち込みと程よいムラ糸感のあるデニムを作りたいという思いで、糸づくりからスタートしたアイテムです。ムラの形状や見え方まで追求した米綿の6番糸をオリジナルで作り、カイハラ125番色でロープ染色して経糸にしました。これを、通常はライトオンスの生地を織る機械を改造して、より太番手の糸を打てるようにした旧型の力織機を使用し、7番の糸をぎりぎりまで打ち込んだものです。
—— シルエットは細身のストレートですか?
寺田:そうです。軽くロールアップしてセルビッチの赤耳を見せながら穿いていただくくらいが、ジャストのサイジングです。このデニムはもう在庫も取り扱いもないものですが、近いもので60’sデニムというものがあるので重ねてみましょう。違いがよくわかると思います。
ーー このリジッドの状態から4年穿きこんだものが、今回のデニムですね。
寺田:はい、修理を依頼してくださったのは、東京の大学生の西村勝浩さん。とてもこのデニムが気に入って週のほとんど穿いてくださっていたのですが、やはり長い間穿いていればダメージも出てきます。そこでリペアということでお店に持ってきていただきました。
—— リジッドから4年穿きこんだデニムがどう変化しているのか、それが非常に気になりますね。
寺田:スタッフみんなでじっくりと見させていただきました。丁寧に穿いてくださったので、非常にいい表情が出ていましたよ。まずフロントの腰回りのヒゲを見てください。
寺田:濃淡がはっきり出ていながら、自然な深みと柔らかいグラデーションが非常にキレイです。ヴィンテージ加工とは一味違う、落ち着いたトーンがいいですね。続いて、ヒザの裏側も見てください。
寺田:細かいシワが折り重なる、通称「蜂の巣」と呼ばれる部分です。ここも生地が折りたたまれている形がはっきりと現れて美しいですね。最後に、デニムの顔とも言われるバックスタイルがこちらです。
寺田:グレーに色落ちしている部分だけでなく、リジッドから穿いているためにインディゴの部分も残っているという、独特の発色です。また、ピスポケットも破れてはいますが、この雰囲気もなかなか「粋」なのではないでしょうか。
—— デニム自体のデザインの部分ですが、オフセットしているセンターループがヴィンテージライクでいいですね。1950年代のデニムに見られたディテールだと思いますが、このパンツが50’Sデニムと呼ばれる所以がわかります。
寺田:そうですね。ヴィンテージデニムの作りを研究して、忠実に再現しています。そのひとつとして、ピスポケットの上部両端には隠しリベットが打ってあります。生地にアタリが出ていますね。
—— では、リペアの件ですが、具体的にはどの部分の修理だったのでしょうか?
寺田:裾をロールアップして穿いてくださっていたので、両方の裾の折り返し部分が前後ともに擦り切れてしまっていました。また、先ほど見ていただいたとおり、右のピスポケット(バックポケット)は破れて穴があいていました。男性のみなさんはよくここに財布を入れますよね。西村さんも財布で破れてしまったと言っていました。
—— リペアのポイントは?
寺田:見せるために叩きを入れていくやり方もありますが、今回は長く穿いていただくために補強を重視したやり方にしています。実際の作業については、いつもお願いしている岡山でリペアを専門に手がけている hands-onさんが、今回もきっちりと仕上げてくださいました。
—— デニムの修理という点で、よくある修理の内容は? またどれくらいの費用がかかりますか?
寺田:やはり、どうしても破れやすいヒザ、股下、ポケット、裾ですね。この部分が圧倒的に多いです。コストとしては、例えば今回の西村さんの場合では裾の前後、ピスポケットの計5箇所で7000円程度です。股下のリペアだとステッチが集中しているので少々工賃もあがってしまいますね。それでも僕たちが作った洋服を長く着たいと思っていただけるのはとても嬉しいことです。デニムに限らずシャツやアウターなど、長い使用で痛みが出てきたアイテムがありましたら、どんどんお店にお持ち寄り下さい。
Composition : Tsuzumi Aoyama