2014年秋冬のコレクションもルック撮影、展示会を終え、あとはデリバリーを待つばかり。洋服のお届けに先駆けて、デザイナー石川俊介に今季の洋服にこめた思いをインタビューしました。前編ではバックグラウンドにある思想を語っていただきましたが、この後編では具体的に素材やアイテムのバリエーションにどのように落とし込んだかを解説。
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素材については、実際に嬬恋に居を構えた経験からやはり天然素材の優位性を強く感じています。カントリーサイドでの生活において、暖をとるため、また食材を調理するために絶対に必要な「火」に対して、合繊にくらべて天然素材は圧倒的に強い。また、クラシックなアウトドア素材であるミラーレーンやベンタイル、ローデンクロスといった生地は街でも自然の中でもエレガントに映ります。これらの打ち込みがしっかりしているクラシックな素材をアウトドアウェア的に位置づけるなら、アウターシェルとして風雨や気温変化、ブッシュの小枝などから身を守るものとなりますが、今季はさらに衣類のレイヤードを自分の中でしっかり整理したいという思いもありました。
この考え方でミッドレイヤーとしてはノール社のキルカラーツイードやスーパーソフトのニット類を作っていきました。ソフトシェルまたは中間着のイメージですね。唯一、合繊で作ったのはインナーダウンですが、これもレイヤリングの観点から「中に着て生活しやすい」ということを徹底して追求しました。
そして重要なのはシャツです。ちょっとした農園での作業や屋内で調理をすることを考えると、生活の基本として絶対に重要なのは長袖のシャツ。6オンスのデニムで作ったワークシャツや2014SSからの流れを汲んだエプロンポケットシャツは白シャツと比べて汚れも目立たず、経年変化でどんどん馴染んでいく良さがあります。また、こういった生活の象徴的なアイテムであるネルシャツは大柄のチェックのなかに洗練されたカラーリングで仕上げています。
その他のハイライトとしては前回のオールインワンの派生型ともいえるサロペットでしょうか。ツナギよりもクラシックな印象で、「漁」ということをイメージしていくつかの型を作っています。レイヤードにも変化を加えることでしょう。ここ数シーズンで好評だったエプロンも時代のキーアイテムとして重要だと考えて数型を作っています。長い丈のもの、そして短めの薪エプロンも実用的でファッション的にも面白さを感じます。
都市生活とカントリーサイドでの生活を「食」の面から見つめ直した今季のコレクションは、まもなくデリバリー開始となります。ぜひ楽しんでください。
Composition:Tsuzumi Aoyama