2014年秋冬のコレクションもルック撮影、展示会を終え、あとはデリバリーを待つばかり。洋服のお届けに先駆けて、デザイナー石川俊介に今季の洋服にこめた思いをインタビューを行い、まずはバックグラウンドにある思想から語っていただきました。
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2014年の秋冬コレクションは、以前の2シーズンに設定したテーマとは少しだけ方向性を変えています。「都市での暮らしとカントリーサイドでの生活を両立する」という部分の関心はいまなお強いなかで、ここ2シーズンは<森の生活>そして<小屋の建て方>と「住」関連のテーマが続いたところで、次は「食」について掘り下げようと思っています。
もともと、「食」については興味がありますが、私は料理をすることよりも食材への関心が強いんです。洋服に例えるなら、形として出来上がった衣類が多くのことを表現していることは間違いありませんが、それ以上に私は衣服を構成する素材や、縫いを表現するミシン、くせづけをするためのアイロンなどのギアに興味があるんです。
同様に「食」でも肉や野菜といった食材を調達する方法や、調理するための道具を知り、選び、そして使うことに面白さを感じるのです。中でも、自分の生活に必要な食材を自分自身で調達することが最も重要です。自分自身が生きていく力をつけることで、いまの世界のエネルギー問題や食糧事情に左右されない強さを持ちたいという思いは年々強くなる一方です。
この私の関心にぴったり合う本が、「Whole Larder Love : Grow Gather Hunt Cook」という本でした。著者のRohan Andersonという人が、自らハンティングに行ってウサギを狩ったり、飼っている鳥を自分でさばいたり、農園で野菜を育てるということを行い、食材の調達から調理に至るまでの過程を本にまとめているものです。
いわゆる料理本というと男のためのキャンプ本や、女性向けのレシピ本というものが世の中には多くありますが、この本は「自給自足する男性の日常という世界観」を提示する切り口が新鮮でした。すべてを自分でやっていくのは大変なことだと思いますが、興味をわかせる面白いものとして映ったんです。そこで、今回の展示会のテーマはこの本から素直に借りて「Whole Larder Love」としました。
「Whole Larder Love」という本、またはキーワードを洋服にどう落とし込めばよいか、いくつかの方法がありましたが、最終的にはカラーリングのイメージソースとしてすることにしました。秋の食材の色合いを中に入れていくことになった結果、服のカラーパレットは非常に秋冬らしくなりましたね。
また、食料を調達することは、畑をつくる「農業」と肉類を得るための「狩猟」そして釣りを含めた「漁」になります。このあたりを服として表現していこうとするとアウトドアウェアに転んでいくんですが、普通のアウトドアウェアにならないよう都会的なエッセンスもいれこみながらベーシックな服を作ろうと試みています。
石川俊介へのインタビュー、前編はここまで。後編では具体的にどのような洋服を作ったか解説していただきます。
Composition : Tsuzumi Aoyama