昨年末、好評をいただいたPARKING MAGAZINEスタイリング企画。4名のスタイリストさんにMARKAWAREのアイテムで自由に遊んでいただき、それをフォトグラファー高木将也さんが撮影をするというもの。4者4様のコーディネート提案にFacebookの「いいね!」で投票をいただいた結果、僅差ながら最も票を集めたのは、スタイリスト真壁いずみさんによるピュアボーイズルックでした。そこで、真壁さんをお招きしてデザイナー石川俊介との対談という形でその舞台裏をご紹介。
石川俊介(以下石川):まずは、最多得票ということで、おめでとうございます。
真壁いずみ(以下真壁):ありがとうございます! 勝負という意識ではなかったんですが、みなさんに気に入っていただけたなら嬉しいです。
石川:MARKAWAREの洋服は僕を中心に前後10歳くらいの年齢の方をイメージしているので、どうしても大人っぽくなってしまうのですが、その服を真壁さんが起用したモデルのような10代の男の子に着せて見せるというあたりは新鮮で面白かったですよ。
真壁:自分がMARKAWAREの服に抱くイメージは、大人っぽいというよりは、スタンダードなアイテムが揃っているという印象だったんです。ベーシックだけれどどこかに色が効いていたり、シルエットがとにかく美しかったり。スタイリストとして服を単体で見て「ブツ映え」ということを考えることもあるんですが、雑誌で見せることを考えても誌面に映えるような要素が必ずどこかに入っているんです。
真壁いずみ/神奈川県生まれ。早稲田大学を卒業後、長友善行氏に師事。独立後は主にファッション誌、カタログ等を中心に、メンズ・レディースを問わず活動中。心地よい色づかいを大切にした、シンプルでクリーンなスタイリングに定評。
石川:なるほど。細かいところまでよく見ていただいて嬉しいですね。
真壁:なので、今回のスタイリングでも大人の洋服を「あえて」若い子に着せようとしたわけではなく、クリーンなMARKAWAREの洋服を、ちょっと知的で品のあるモデルに着せたらきっと似合うだろうという狙いがあったんです。
石川:自分たちでルックブックを作ろうとすると、どうしてももっと男らしいモデルに着せたくなってしまうところがあって、その点、非常に新しく感じられたんです。コーディネートを組むにあたって何かテーマのようなものはあったのでしょうか?
真壁:今シーズンの洋服のなかではグリーンの入り方がとても綺麗だなと思っていたんです。決して奇をてらわず、自然に洋服のなかに差し込まれているという印象で。そこでどのスタイルでもグリーンをキーに考えるということをしました。
石川:WALDENをテーマに、ソローの「森の生活」をイメージしていたのがこの秋冬のコレクションだったので、フォレストグリーンはまさにブランドとしても大事にしているカラーです。しかし、そのグリーンが決してカントリーサイドのカラーリングという見え方ではなく、街に馴染むグリーンとして見せてくださっているところが良かったですね。では早速ですが、それぞれのコーディネートを見ていきましょうか。
真壁:「緑のパンツ」と聞くと、普通に考えたらすごく難易度の高いアイテムですよね。でもこのパンツは形もとても綺麗だし、手にとったときにはウールの程よい生地の肉厚感が気持よかった。厚すぎず、ストンと綺麗なフォルムが出るんですよね。このパンツを主役に持ってきたいというコーディネートでした。
石川:実は僕もこのパンツを週に3回くらい履いているんです(笑)。意外と使いやすいんですよ。トップスにはネイビーを使ってもらっているけれど、今はネイビーやブラックなど暗いトーンのアウターが多い中で、それに合わせるボトムスをネイビーから外したいとき、今までのオーセンティックなアイテムだとMARKAWAREではチノくらいしかなかったところに差し込んでいきたいという意図で作ったパンツなんです。
Photo:Masaya Takagi
Photo:Masaya Takagi
真壁:さきほどのウールパンツがあまりにも気に入ってしまったので、色違いでまた使ってしまいました(笑)。バイカラーのブルゾンで全体はネイビー系に統一し、差し色としてグリーンを使う形ですね。小花柄のシャツはすごく便利ですね。花柄のシャツはともするとファッションコンシャスになりすぎてしまうところがありますが、アウターとボトムスでワントーンにしたときに挿し込むのに程よい存在感があり、合わせやすいアイテムです。
石川:シャツの裾もパンツにしまい、ボタンも首まできちんと止めて小奇麗ですよね。このブルゾンは生地のハリが強くて比較的男らしいフォルムなのですが、ラグランスリーブなので撫で肩の男性が着てもサマになる。
真壁:グリーンのスタジャンとモールスキンのストレートパンツでシンプルに。人からの感想として「このブルゾンの丈とボトムスのシルエットは、スタイリングを楽しんでいるようで良かったね」と言われてとても嬉しかったことを覚えています。
石川:とてもベーシックな合わせですよね。スタジャンとニット、そしてブルゾンを。柔らかい色合わせもいいですね。MARKAWAREのルックブックにはなかなか出てこない雰囲気。今回は特に「山」をテーマにして撮影してきたので、こういう街らしい雰囲気のコーディネイト提案はとても良いと思います。街と自然、どちらもブランドとして大切にしている部分なので。
石川:迷彩のアウターですが、中にモスグリーンのシャツをあわせていただいていますね。目立たない部分ですが、実に効いている。
真壁:グリーンのシャツ、ラフなカモフラ柄のアウター、この2つのアイテムがすごく気に入ってしまったので、フォトグラファーの高木将也さんにはこのルックをメインに据えて全体を考えていきたいと相談しながらの撮影でした。
石川:中学生、高校生くらいの男の子が、カッコつけているんだけれど、どこかカッコつけきれていない。アーティストに憧れてサングラスをかけてみたけれど、まだ顔に馴染んでいないという。スニーカーのソールが見えているこの写真が、とても多くのコトを語っているようで良いですね。
真壁:この中にネイビーのニットを着ている人も素敵だと思うんですが、綺麗なシャツをちょっとあわせてみてカモ柄とのバランスを楽しむというところを表現したかったんです。
—— 日本人の男の子で、こういういい感じのシンプルさで着られる人って少ないんですよね。ついいろいろ足したくなってしまう。
石川:日本独特のレイヤード文化があるから、そこからの引き算的なスタイリングとも言えそうですよね。もしかしたら生き様にも通じる部分があるかもしれません。洋服なんて気にしていないように見せながら、実は洗練された感性で着る物を選んでいきたいという。僕らの年代には、いまだに「オシャレをし過ぎること」への気恥ずかしさがあるんですよ。あんまり洋服のことは気にしていないように見せるけど、そこそこちゃんとしたものは着ています、くらいの感じに押さえておきたいということころがあって。
真壁:すごく考えて、このトップスのために選んだシャツなのに「このシャツ? むかし買ったヤツがあったから合わせてみた」くらいに言いたい感じですよね。
石川:そうそう。その意味でもこのコーディネイトはウチのブランドをきちんと捉えてもらっている良いコーディネイトだと思います。
—— これですべての4コーディネートを見てきた形になりますが、石川さん、最初にご覧になったときにどのような感想をもたれましたか?
石川:2013FWは、ルックブックが自然色が強いものとして仕上がっていたけれど、この企画ではスタイリストのみなさんにとても街らしいコーディネイトにしていただけて、先ほども言いましたが、街と自然の両方の要素を見せることができて良かったというのがひとつ。それから年齢層の部分で、自分が想定している30代から40代後半くらいというイメージを突き抜けてぐっと若い方にも似合うというところを見せていただけたのが面白かったですね。
真壁:他の方のコーディネイトも小道具の使い方だったり、みなさんそれぞれにキメや抜けというところを表現されていて、同じテーマでも様々な表現の幅があるのだなと改めて実感しました。
石川:高木将也さんの写真も素晴らしかったですね。オフショットやポラロイドを入れてバックステージ風にストーリーに深みを出したり、モノクロを差し込んでリズムを変化させたり。みなさんそれぞれ、違う雑誌を見ているような気持ちにもなりました。ブランドとしてしっかりとイメージを伝える部分は従来通りルックブックで形にしていくことは変わりませんが、PARKING MAGAZINEという場所でこうした見せ方をしていくことも今後やっていきたいと思います。真壁さんをはじめ、協力していただいたヤギトモヤさん、来田拓也さん、山口ゆうすけさんにもお礼を申し上げます。ありがとうございました。
>> MARKAWARE 2013FW Free Styling企画のページはこちら
Composition:Parking Magazine