アメリカ旅行、そして2013FWコレクション解説もこれで最終回です。
ウォールデンを訪れたことで、2013FWコレクションでの洋服の色合いも自然に定まりました。秋のウォールデン池の美しい光景から着想を得た自然の色です。僕が訪れたときのウォールデン池は紅葉の時期を過ぎていましたが、そこで見た自然の色や、自然に馴染むカラーリングを洋服に取り入れています。
素材では、圧倒的に天然素材が中心です。ブランドのアイデンティティーとして経年変化が楽しめるウールやコットンを使い続けたいという思い。それに加えて『森の生活』というテーマからの帰結として、合成繊維の高機能素材ではなく天然素材を使うことは必然でした。
3レイヤーなどの合成繊維はハードなクライミング(時に氷点下の気温のなかで何時間も過ごさなければならない)では自分の命を守るために必要となる素材ですが、生活という観点からみるとオーバースペックですね。穏やかに落ち着いて暮らすことを考えれば、実は天然素材のもつ快適性・風合いの方がしっくり来る。
また、生活には「火」が必要です。料理をしたり、焚き火で暖をとったり、お湯を沸かしたり。その点、天然素材は合成の化学繊維よりも火にも強いという長所があります。ナイロンのアウターは火の粉で簡単に溶けてしまいますが、天然素材のアウターではその心配はありません。
キーとなるルックとしては、フォレストコートと名付けたダブルのロングコートに軽くロールアップしたパンツをあわせ、フルブローグダービーシューズを履き森や都市を散策するイメージのスタイルです。
ほか、今季のアイテムのなかではドネガルツイードで展開するカーディガンやベスト、帽子とマフラーなどのアイテムも面白いと思います。
2013FWのコレクションは、日々の生活の質の向上を目指しつつ、都市と自然ということを強く意識したワードローブの提案です。都会での生活のシーンや、カントリーサイドでのアウトドアライフなど、様々なシーンの中でのスタイリングをイメージしながら楽しんでいただければと思います。