アメリカ旅行記も残すところあと1回となりました。今回は、ソロー、ウォールデンと今季のMARKAWAREの服作りについて記します。
19世紀アメリカの思想家、『Walden; or, Life in the Woods』を著したH.D.ソローはウォールデン池のほとりで2年2ヶ月にわたり自給自足の生活を行い、孤独のなかで思索を深めました。彼の不服従の精神や環境保護の思想は多くのフォロワーを生み、その著作には現代でも多くの信奉者が存在します。私もソローが記した考え方や洞察には大いに影響を受けました。
今回、コレクションのテーマは「WALDEN」と決めました。しかし、ソローのように隠遁生活を送ることを推奨するものではありません。私自身もまだ隠居するつもりもありません。洋服作りの軸になったものはソローの著作から見えてくる当時のアメリカの生活様式や服装ではなく、いろいろ自分でやってみるという暮らし方と、書籍の日本語タイトル『森の生活』という言葉そのものです。
今、自分が最も興味のあるものをコレクションに落とし込もうとしたとき、「森の生活」以上のテーマはありませんでした。都市で生活する男性のための洋服でありながら、自然の中で生活をする男性が着る洋服でもある。すなわち、自分で手を動かして何かを作り出すために必要な洋服。
自然と都市をシームレスに活動できる洋服があるとしたら、どういった機能が必要で、ディテールにはどう落としこむのが自然でスタイリッシュなのか。そんなことをイメージしながらデザインをおこないました。次回の更新(Trip to Statesシリーズの最終回です)では、いくつかのルックを披露させていただきます。
Photo & Text : Shunsuke Ishikawa