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PARKING
衣・食・住・遊のすべてにこだわりを持つ男性のための新しい生き方を模索する、Lifestyle Magazine型のショップ。
洋服のほか男性の生活全般に渡って必要な道具や消耗品をそろえ、「自然と街を結ぶトランスポーター」である自動車も重要なエッセンスとして機能。
PARKING MAGAZINE
今とこれからの男性の生き方を模索するウェブマガジン。働くこと、遊ぶこと、生活することを三位一体とし、「グローバル|ローカル」, 「都市|自然」, 「消費|創造」といった様々な隔たりを軽やかに飛び越えていく、自由で活動的でDIY精神豊かな男性像を模索していくウェブマガジンです。
PARKING COFFEE×CACAO WORKS
数社のロースターと契約し、セレクトしたスペシャリティーコーヒーを提供。
産地から直送されるカカオ豆を自家焙煎し、カカオと砂糖のみを用いた特別製法のチョコレートを販売。
コーヒーとチョコレートで朝の目覚まし、軽いランチ、午後の気分転換、夕方の一休みなどの時間と空間を提供します。

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  • PARKING
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    1-3-8 Nakameguro, Meguro-ku
    Tokyo, JAPAN 153-0061
    153-0061 東京都目黒区中目黒 1-3-8
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    TEL: 03-6412-8217
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    STORE HOURS:
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    WEDNESDAY CLOSED

    PARKING

  • PARKING COFFEE X CACAO WORKS
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    153-0051 東京都目黒区上目黒 1-10-5
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    TEL: 03-6427-0806
    EMAIL: info@parkingmag.jp
    STORE HOURS: 9:00 - 19:00
    (Irregular Holidays)

    PARKING COFFEE X CACAO WORKS

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    ADDRESS:
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    Tokyo, JAPAN 150-0061
    153-0061 東京都目黒区中目黒 1-1-45
    TEL: 03-6412-8637

    Existence Co., Ltd.

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2013.12.31
Movie Review Nº7『La Dolce Vita』『8 1/2』

フェデリコ・フェリーニが大好きだ。彼の映画を観ると、その祝祭性に気持ちがウキウキしてしまう。

かつて、某雑誌のイタリア特集のため、<リポーターズ・アソシアティ>というパパラッチ集団を束ねるローマの会社に行って、写真を借りたことがある。  

フェリーニの代表作は全部あって、『甘い生活』(La Dolce Vita、1960年)は12,000枚、『8 1/2』(Otto e Mezzo、1963年) は18,000枚、映画のスチル写真をネガ保存していた。映画のスチル写真をつなげば映画になるほどで(日本映画の場合、数100枚が限度だ!)、それらを全部ネガの状態で観て、ほしい写真のみ紙焼きにしてもらったのだが、『8 1/2』はもとより、『甘い生活』の撮影現場の一部始終がのぞける映画的な資料だった。

ヴェネト通り(東京でいえば銀座にあたる繁華街)やトレヴィの泉に行けば、ここで『甘い生活』の撮影が行われました、というプレートがあるのだが、実際は、撮影が全部チネチッタで行われた。撮影許可が下りなかったのかもしれないが、フェリーニは撮影を自由にできる場所を選んだのだ。ヴェネト通りも、トレヴィの泉も、レオナルド・ダ・ヴィンチ空港も、サン・ピエトロ寺院の円屋根も、すべてのシーンはチネチッタのサウンドステージ第5、通称テアトロ・フェリーニと呼ばれたスタジオで撮られたものだった。例えばヴェネト通りでは通りを忠実に再現しているが、スチル写真には通りを照らすキーライトが映っているという具合。『8 1/2』の温泉宿も広場も、そうだった。

『甘い生活』はこんな話だ。作家志望の夢を抱いてローマに出た青年マルチェロ・ルビーニ(マルチェロ・マストロヤンニ)は、今は社交界ゴシップ専門のトップ屋となった。憧れた都は退廃と無気力以外の何ものでもなかった。カトリックもキリストの像をヘリコプターで運ぶなど、華やかな示威をしたものの、豪華なナイトクラブではローマの大富豪の娘マッダレーナ(アヌーク・エーメ)にめぐり会った。場末の夜の女の宿でマルチェロと一夜をすごすことも、彼女にとってはほんの気まぐれだった。郊外のわびしい家に帰った時、マルチェロは同棲中の愛人エンマが服毒して苦しんでいるのを見た。しかし悔いる気持も永くは続かなかった。彼はハリウッドのグラマー女優(アニタ・エクバーグ)を迎えると、聖ピエトロ寺院などを見物、名所トレヴィの泉で彼女と戯れた。ローマ地方の郊外で奇蹟が起きた。再び聖母出現の日の聖地はテレビカメラに包囲され、奇蹟にあやかろうと横たわる病人の上に豪雨が降りそそいだ。日頃マルチェロのため悩みの絶えぬエンマは熱狂して信じた。2人は友人スタイナー(アラン・キュニー)の家を訪れ、調和と安らぎに満ちたその生活を羨んだ。

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ある夜、豪壮な館のパーティーに出たマルチェロは、虚脱したように歓楽をむさぼる貴族たちの仲間入りをした。スタイナーは死んだ。子供を連れた無理心中だった。平和に見えた一家のこの悲劇の深さはマルチェロの残った夢をすべて消した。その場限りの快楽の他に今の彼は何を望んだろう。やがて海に近い別荘でこの世のものとも思えぬ乱痴気騒ぎの狂宴がくりひろげられた。マルチェロは狂乱の中に没入した。夜明け方、人々は快楽に疲れ果てた体をひきずって海辺に出た。波打ち際に打ち上げられた怪魚は、腐敗し悪臭を放ち、彼らの姿そのものだった。彼方から顔みしりの少女が何か叫んでいる。その声は波に消されて彼の耳には入らない。真実の生命の清純さに溢れる少女に背を向けて、マルチェロは砂浜を別荘の方へと戻って行った。

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一方の『8 1/2』はこんな話。グイド・アンセルミ(マルチェロ・マストロヤンニ)は43歳、一流の映画監督である。彼は医者のすすめに従って湯治場にやってきた。湯治場に来てもグイドは、愛人カルラ(サンドラ・ミーロ)、妻ルイザ(アヌーク・エーメ)そして職業の上での知人たちとの関係の網の目から逃れることはできない。カルラは美しい女性だが、肉体的な愛情だけで結ばれている存在で、今のグイドにとっては、煩わしくさえ感じられる。妻ルイザとの関係はいわば惰性で、別居することを考えはするものの、実行する勇気がないだけでなく、時には必要とさえ感じるのだ。そんなグイドの心をよぎるのは若く美しい女性クラウディア(クラウディア・カルディナーレ)だ。彼女はグイドの願望の象徴である。

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しかし彼女との情事の夢もむなしく消えてしまう。彼の夢、彼の想像の中で、思索は今は亡き両親の上に移る。そして次々と古い思い出をたどる……ブドウ酒風呂を恐れ逃げまわる少年グイド、乞食女と踊ったことで神父から罰せられる神学校の生徒時代のグイド。やがて保養を終えたグイドは混乱と失意のまま、もとの生活にもどる。彼がすべてのことを投げ出そうとした瞬間、彼の心の中で何かが動き出した。彼の渦去のすべての対人関係、逃れようのない絶対の人生経験をかたち作っているすべての人が、笑顔をもって彼と同じ目的地に向っていこうとしているのである。映画製作が始まった。オープンセットでグイドは叫ぶ。「みんな輪になってくれ、手をつないで踊るんだ!」。演出していた映画監督グイドは、自分も妻とともに輪の中に入る。踊り続ける人々はやがて闇の中に消えた。ただひとり残り、一心に笛を吹き続けるのは、少年時代のグイドだ。

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どちらも音楽ニーノ・ロータ、衣裳ピエロ・ゲラルディで、フェリーニ監督の自伝的な内容である。

『甘い生活』は『青春群像』(1953年、マーティン・スコセッシ監督の『ミーン・ストリート』に多くの影響を与えた) のひとり、モラルドの後日談ともみることができる。『81/2』は共同監督作品が1本あるフェリーニ監督の8.5本目という意味である。ボブ・フォッシーやウッディ・アレンに影響を与えた作品で、ロブ・マーシャル監督のミュージカル『NINE』(2009年) は完全なるリメイク作品だ。

『甘い生活』『8 1/2』は大好きな映画で、双方10回以上観ている。例えば『甘い生活』はパパラッチの語源になった作品だ。パパラッツォというカメラマンが登場する。それが詰まってパパラッチとなったのだ。これら両方の作品はそれこそ2~3万字書ける。それだけ内容が濃いということなのだ。

ファッションの観点からいえば『8 1/2』での登場人物たちは今観てもカッコいい。ピエロ・ゲラルディはこの作品で米アカデミー白黒衣裳デザイン賞を受賞した(『甘い生活』でも同賞を受賞)。白黒作品ならではの濃淡を生かし、とくにスーツスタイルでは最高のシルエットが美しく浮かび上がっている。

『甘い生活』のラスト、白いジャケットを着たマルチェロ・マストロヤンニが一瞬、キョトンとした表情をする。海岸線には巨大な怪魚が打ち上げられ、無垢なる少女からの声も届かない。その巨大な怪魚が現代のわれわれであることは自明の理だ。そのラストシーンのスチル写真が、10年ぐらい前のヴェネチア国際映画祭の公式ポスターになっていた。

 

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(c)RIAMA FILM Roma / CINECITTA / PATHE CONSORTIUM CINEMA Paris
発売・販売元:アイ・ヴィー・シー
価格:Blu-ray ¥5,040
   DVD     ¥3,990

 

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発売元:IMAGICA TV
販売元:KADOKAWA
価格:Blu-ray 6,090円

Text : Mutsuo Sato