コーヒー豆から、いかにカップに注ぐ液体に「風味の特製」と「爽やかな酸味」と「甘さの感覚で消えていくコーヒー感」を抽出するか。エアロプレスやフレンチプレス、そしてペーパードリップなど、さまざまな手法が試みられています。
エアロプレスやフレンチプレスの場合、レシピに忠実に抽出することで比較的誰でも安定して同じ味のコーヒーが淹れられるという利点があります。一方で、ペーパードリップの場合は手作業でお湯を注ぎ続けなければならないため、安定した抽出のためには(一定のスピードで同じ分量で給湯していくために)熟練したバリスタの技術が必要です。
蒸らしの過程で膨らんでいく豆、立ちのぼるかぐわしい香り、そこに注がれるお湯が染みていく様子など、五感を刺激されるペーパードリップならではのコーヒー体験が味わえるのは間違いありませんが、家庭でペーパードリップを試みるのには難しさを感じるのも正直なところ。
そんなペーパードリップ派の間で、特に海外で最近注目されているペーパーフィルターがあるとのこと。PARKING COFFEE × CACAO WORKSのバリスタ奈良美由季さんは、かつてカナダのコーヒーショップでコーヒーを学んでおり、現在でも海外のバリスタたちと連絡をとっていますが、特にカナダのバリスタたちの間ではヴィクトリアの人気ロースターBows & Arrows Coffee Roastersを中心に「カリタウェーブ」が流行のきざしを見せているようです。
写真を見ていただくとわかるとおり、フィルターが波打った独特の形状をしており底面はフラット。ドリッパーの底には3つの穴が開いています。波打ったフィルターはドリッパーとの接触面が少ないため、ドリッパーの3つ穴の効果も相まってお湯の抜けがよいのだそう。これは過抽出によるエグみや渋みを防ぐ効果が。またフラットな底面のために粉とお湯が均等に馴染むので、浅煎りコーヒーのフレーバーがしっかり抽出され、きれいな酸によるクリアな飲み口のコーヒーになるとのこと。
ご存知の通り、カリタは1959年創業の日本のメーカーですが、カナダではまだウェーブシリーズの流通量が少ないため入手困難。引く手あまたとなっているそうです。幸い、日本では容易に購入できるので、家庭でペーパードリップでスペシャルティーコーヒーを楽しみたい向きにはおすすめです。
おいしく淹れるコツとしては、給湯の際に通常のペーパードリップ同様、中心のストライクゾーンを外さないこと。とはいえ、多少狙いを外してもウェーブ部分に粉の層ができるため、フィルターに直接お湯を当ててしまうというミスは防ぎやすい形状になっています。また、お湯の落ちるスピードが比較的早いのでご注意を。ひと味違う、上質なコーヒーをぜひお楽しみください。
Photo & Text : Tsuzumi Aoyama