『セブン』(1995年)『ファイト・クラブ』(1999年)『ドラゴン・タトゥーの女』(2011年)のデヴィッド・フィンチャーが描く、超刺激的なサイコロジカル・スリラーである。
幸福の絶頂にいるはずのセレブリティ夫妻であるニック(ベン・アフレック)とエイミー(ロザムンド・パイク)が主人公。5回目の結婚記念日に忽然とセレブ妻が姿を消したのだ。「キッチンの大量の血痕」や「妻の日記」や「結婚記念日の宝探しのメッセージ」といったヒントを残したまま。警察は「他殺」と「失踪」の両面で可能性を探るが、第一発見者の夫ニックが第一容疑者として疑われてしまう。
アルフレッド・ヒッチコックが生きていたら、真っ先に手を挙げそうな映画的な題材だ。ギリアン・コリン著の600万部以上を売り上げた全米ベストセラー小説の映画化で、本作は全米でフィンヴァー作品では過去最高のオープニング興収を記録した。
ともかく、上手い。デヴィッド・フィンチャー監督らしいストーリーテリングが冴えわたる作品だ。
そして、ロザムンド・パイク(筆者は、2002年の『007/ダイ・アンザー・デイ』のオーストラリア・メルボルンのジャンケットで一度会っている)が匂い立つような美しさであり、彼女に完全にノックダウンされるのだ。
実はこの映画は少しだけプロットを明かすだけでネタバレになってしまう用意周到な作品で、どのように書いたらいいのか、非常に難しい。ただ痛快無比なおもしろさがあることは保証する。
フィンチャーをはじめ。(『ファイト・クラブ』や『ソーシャル・ネットワーク』や『ドラゴン・タトゥーの女』とまったく同じメンツである)、撮影監督のジェフ・クローネンウェス、プロダクションデザイナーのドナルド・グラハム・バート、衣装デザイナーのトリッシュ・サマーヴィル、そして編集のカーク・バクスターらが、この『ゴーン・ガール』の世界観を創り上げている。米中西部ミズーリ州の大邸宅(すごいセレブな生活だ)がこのサイコロジカル・スリラーの舞台であり、残された側の夫ニックはまるで精神的なローラーコースターに乗っているかのようだ。つまりはフィンチャーらしい魔法のような、効果的なビジュアル・スタイルを現出させているのだ。
すばらしいダーク・ユーモアが弾けるクライマックスの戦慄はどうだ! 「ゴーン・ガール」になってしまう妻エイミーの動向に注視しなければならないが、表面的な部分を剥いで剥いでやっと見えた彼女の核心に近づくと、「こうきたか!」と観ている観客は自分の膝を叩きたくなる。これまでの映画の中でも出色の出来であり、その痛快な衝撃は後になってじわじわとやってくるのだ。
『ゴーン・ガール』
12月12日(金)全国ロードショー
20世紀フォックス映画 配給
(C)2014 Twentieth Century Fox
http://www.foxmovies-jp.com/gone-girl/
Text : Mutsuo Sato