10月25日から10月27日にかけて3日間、静岡県富士宮市の「国立中央青少年の家」で開催された「第二回 狩猟サミット」にMARKAWAREデザイナー石川俊介とライター青山の二名で参加してきました。参加者数は200名を超え、平均年令はなんと34.8歳という若さ。活気に満ちたイベントをレポートする最終回です。
昨夜の交流会の余韻も残る目覚めは朝の6時半。ベッドのリネンを自分たちで畳み、部屋の清掃も済ませます。
昨日の「10分プレゼン」は大きな部屋を4分割したなかでのプレゼンテーションでしたが、本日は「分科会」と称して部屋ごとにわかれ、講師の話を集中して聞きます。分科会は9:00-11:00の1st Class、昼食を挟んで12:30-14:20に2nd Class、14:30-16:20に3rd Classの3コマ。それぞれのコマごとに5つのタイトルから1つを選んで受講します。
1st Classの5つの講義は以下の通り。「新米猟師のためのはじめての獲物 ステップ by ステップ」では高山で猟師をしている瀬戸祐介さんの実践講義。「獣害問題の基礎知識/狩猟習俗例」は自然系ジャーナリストの熊鹿勤さんが“いま若者や女性の間で狩猟への関心が高まっている。こうしたムーブメントは10年ほど前までは想像もつかないことだった”という切り口から、人と野生動物の関係性の歴史を振り返ります。藤原誉さんの「失敗しない解体書運営ノウハウ」では解体のコツ、猟師間での取引値、販売、卸の値段設定や猟師さんとのつきあい方をレクチャー。ほか、女性狩猟者ネットワークの取り組みの事例紹介や鹿革クラフトワークショップなど。僕は「新米猟師のためのはじめての獲物」を選択しました。
講師の瀬戸祐介さんは飛騨の高山で暮らす猟師です。雪のない季節にはワナ猟、雪が降り始めるとかんじきを履いて雪山を歩き、獲物を追っています。配布されたレジュメも「1. 銃と弾薬、照準装置」から始まる、非常に実践的なもの。散弾銃の種類、装填する弾の種類と用途、照準装置の選び方にはじまり、ネイティブアメリカンたちの狩猟方法から瀬戸さんが取り入れた、ストーキング、トラッキング、ホークアイなどのメソッドの紹介、鹿狩り、イノシシ狩りの手順、ワナの設置方法、そしてとらえた獲物の解体方法と食肉から革のなめしに至るまで。猟のイロハが詰まった講義でした。
2nd Classも充実したカリキュラム。「どうなるチョージューホゴ法の中身? 法改正と現場の取組みを考える」では来年5月に運用がスタートする新制度について、現場の猟師さんも含めたディスカッションが行われました。また、東京・墨田区で皮なめしの向上を営む山口産業を中心に結成したMATAGIプロジェクトによる、捕獲した猪や鹿の革の製品化までの加工工程を紹介。また違うカリキュラムでは楽器(主に太鼓など)用の皮のほぼ100%が海外からの輸入に頼っているという現状から、日本の森の恵の獣皮を楽器の「ジャンベ」に張ってみようという体験企画も。
3rd Classでは『ぼくは猟師になった』の著者である千松信也さんが登場。デザイナー石川俊介もこの講義を聞き、現在の狩猟ブームについて考えるところをBlogにまとめています。ほか、東京の三軒茶屋にあるシカ専門店での人気メニュー「シカのロースト」の調理法をレクチャー、試食するカリキュラムや、「シカマタギの郷、井川の山岳猟と利用文化」として伝統的に受け継がれている山岳猟と動物の利用方法の紹介など。「ソーシャルビジネスとしての獣害対策と狩猟2.0〜失敗の事例から〜」では講義だけでなく、1つの集落の獣害対策を実際に考えてみるという体験ワークショップを開催。
駆け足の説明になりましたが、狩猟という事柄を多角的に切り取り、それぞれの専門家が解説する分科会は非常に刺激的でいずれも聴き応えのあるものでした。実際の狩猟者、狩猟の初心者から、これから狩猟に興味を持つもの、獣害対策に迫られている農家など、さまざまな参加者が充実した表情を浮かべているのが印象的でした。
さて、濃密な講義のあとは夜の大交流会。1日目同様にジビエも振る舞われるなか、参加者同士の交流会です。名刺を交換するもの、Facebookのアカウントで繋がるもの、昼間の分科会の余韻から熱心に話し込むもの。その傍らで分科会でも使用されていたジャンベを中心に出来上がった輪からも熱気が立ち上るなか、濃密な2日目が幕を閉じました。
実はこのイベントは土・日・月の三日間に渡り行われており、3日目には狩猟の最新情報のレクチャーや、鹿の解体などのカリキュラムが組まれていたのですが、残念ながら3日目は欠席。多くの狩猟関係者とも交流を持つ中で、自分も狩猟免許を取得しようと心に誓いながら帰路につきました。
Photo & Text : Tsuzumi Aoyama