10月25日から10月27日にかけて3日間、静岡県富士宮市の「国立中央青少年の家」で開催された「第二回 狩猟サミット」にMARKAWAREデザイナー石川俊介とライター青山の二名で参加してきました。参加者数は200名を超え、平均年令はなんと34.8歳という若さ。活気に満ちたイベントをレポートします。
富士山が見下ろす会場で行われたイベントは、まずは基調講演からスタート。伝統的狩猟集落(マタギ集落)を中心に日本の狩猟文化を研究し、1990年から「ブナ林と狩人の会~マタギサミット~」を25年にもわたり主幹している田口洋美氏による基調講演です。タイトルは「生き方としての狩人:その歴史社会的流れ」。
歴史を遡ること1000年以上。日本書紀には、611年(推古11年)には薬とするために鹿の袋角を獲っていたという記載があるとおり、日本人にとっての狩猟は長い歴史を持っています。1263年(弘長3年)には農耕地における鳥獣害の記録が残され、やがて1500年ころには東北地方の山間部にマタギ集落が形成されました。
このあたり、非常に長くなってしまうので割愛しますが、近代においては1950年代のスポーツハンティングの流行(ニッカボッカ+鳥打帽のスタイルです)を経て、1970年代のあさま山荘事件で猟銃が使用されたことや、ゴルフ場が増えたことにより狩場が衰退したこと、動物愛護の機運の高まりといったことなどから狩猟の冬の時代が訪れます。約1時間に渡る講演でしたが、スライドなど資料を活用した非常にわかりやすいもので、参加者はメモを取りながら田口洋美氏の話に耳を傾けていました。
続いて「10分プレゼン」。会場を4つに区切り、実際の狩猟者によるプレゼンテーションを行います。例えば「新米&週末猟師でも確実に捕獲する」と題した猪や鹿を捉えるくくり罠の設置方法のプレゼンテーションでは、獲物が罠を踏むポイントを探って罠を設置→暗視カメラを使って実際の行動を監視→罠の位置を調整しなおして確保、という一連の流れを実際の暗視カメラの映像を見ながら解説するというもの。
実際に里山で狩猟生活を営む方から、農林水産省で実務に携わる現場の方まで、幅広い方がプレゼンテーションを行っていました。
ちなみに他のプレゼンテーションのタイトルを一部抜粋すると以下の通り。
「新米&週末猟師でも確実に捕獲する」
「狩猟と暮らしと仕事の関わり」
「獣害対策専従の人材の必要性」
「鳥獣法改正〜増えすぎたシカやイノシシとの共生のために」
「自然学校的 野生鳥獣対策〜里山事業〜」
「なぜ「進学塾 日能研」が「獣害」?〜獣害から考え始める未来〜」
「半猟半ガイドの暮らし〜森のたね的里山生活」
など。
今回のイベントの面白さの一つは、大きな会場を使ったセミナーだけでなく、参加者たちが同じ施設で寝食をともにすること。プログラムの合間、お風呂の順番を待つ間など、多くの会話を持つことができました。ちなみに僕自身が同室になった参加者は、猟銃の免許こそとったものの地域の狩猟者ネットワークに入っていくことができないという悩みを持っており、他の参加者とノウハウを共有したいという動機から参加したとのこと。
夜には会場のなかにあるバーベキューのスペースを利用した交流会。岐阜県郡上市を拠点に活動する若手猟師チームの猪鹿庁による鹿料理のほか、猪の燻製やテリーヌなど、ジビエ料理も振る舞われました。
日本各地からの参加者が差し入れしたお酒を飲みながら、会話も弾みます。米を鹿に食い荒らされてしまうことから自衛のために狩猟をはじめたという新潟のコメ農家の方、専門学校で野生動物保護を学ぶ学生さん、林業を営まれている経営者の方など、様々な方が参加しています。都市生活をしているとなかなか感じることのできない野生動物と人間の生活との関わりを知り、リアルな問題として感じることができる、得難い経験でした。
夜が更けていくなか、盛況のまま交流会は幕を閉じました。
狩猟サミット2014レポート2回目終わり。次回更新は12/11(木)を予定しています。
Photo & Text : Tsuzumi Aoyama