高松次郎《遠近法の椅子とテーブル》1966-67年 東京国立近代美術館蔵 撮影:上野則宏
©The Estate of Jiro Takamatsu, Courtesy of Yumiko Chiba Associates
先頃亡くなった赤瀬川原平とともに「ハイレッド・センター」の一員として活動していたこともある高松次郎。赤瀬川もアートに文筆にと多面体的な活動を展開していましたが、高松もそれに負けず、一言ではくくれない幅の広さを見せたアーティストです。1936年生まれ、60年代から90年代にかけて活動しました。
高松次郎《形 No.1202》1987 年 国立国際美術館蔵 ©The Estate of Jiro Takamatsu, Courtesy of Yumiko Chiba Associates
高松の活動は、ジャンルとしてはアートなのですが、その作風はほとんど分裂していると言っていいほど。色のかたまりやカラフルな線がうねる抽象絵画、影を描いたドローイング、歪んだ椅子とテーブルによる立体作品、こんがらかったヒモ、写真を撮った写真……。インテリアデザイナー、倉俣史朗と協働して新宿のサパークラブの壁に影のドローイングを描いたこともありました。ハイレッド・センターのもう一人のメンバー、中西夏之が絵画を軸に据えているのとは対照的に、1998年に62歳で没するまで次々と新しい顔を見せ続けていた作家です。
高松次郎《No.273(影)》1969 年 東京国立近代美術館蔵 ©The Estate of Jiro Takamatsu, Courtesy of Yumiko Chiba Associates
この展覧会は一見して脈絡のなさそうな彼の足跡に潜む、一貫したつながりを掘り起こそうとするもの。約50点のオブジェや彫刻、絵画と約150点の関連するドローイングでその謎に迫ります。初期・中期・後期と3部に分かれた展覧会をそれぞれ異なるキュレーターが担当するのも話題です。会場構成は「横山裕一展」(2010年、川崎市市民ミュージアム)の会場構成や「トラフのお化け屋敷は“化かし屋敷”」(2013年、東京都現代美術館)を手がけたトラフ建築設計事務所。高松次郎の頭の中の迷宮が現実の空間となって、その中をさまよう快楽が待っています。
高松次郎《光と影》1970年 個人蔵 撮影:木奥恵三 ©The Estate of Jiro Takamatsu, Courtesy of Yumiko Chiba Associates
『高松次郎ミステリーズ』は2014年12月2日から2015年3月1日まで、東京国立近代美術館で開かれます。
《紐》を制作中の高松次郎 1963年頃 ©The Estate of Jiro Takamatsu, Courtesy of Yumiko Chiba Associates
Text : Naoko Aono