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PARKING
衣・食・住・遊のすべてにこだわりを持つ男性のための新しい生き方を模索する、Lifestyle Magazine型のショップ。
洋服のほか男性の生活全般に渡って必要な道具や消耗品をそろえ、「自然と街を結ぶトランスポーター」である自動車も重要なエッセンスとして機能。
PARKING MAGAZINE
今とこれからの男性の生き方を模索するウェブマガジン。働くこと、遊ぶこと、生活することを三位一体とし、「グローバル|ローカル」, 「都市|自然」, 「消費|創造」といった様々な隔たりを軽やかに飛び越えていく、自由で活動的でDIY精神豊かな男性像を模索していくウェブマガジンです。
PARKING COFFEE×CACAO WORKS
数社のロースターと契約し、セレクトしたスペシャリティーコーヒーを提供。
産地から直送されるカカオ豆を自家焙煎し、カカオと砂糖のみを用いた特別製法のチョコレートを販売。
コーヒーとチョコレートで朝の目覚まし、軽いランチ、午後の気分転換、夕方の一休みなどの時間と空間を提供します。

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  • PARKING
    ADDRESS: Watanabe bldg.1F
    1-3-8 Nakameguro, Meguro-ku
    Tokyo, JAPAN 153-0061
    153-0061 東京都目黒区中目黒 1-3-8
    渡辺ビル 1F
    TEL: 03-6412-8217
    EMAIL: info@parkingmag.jp
    STORE HOURS:
    12:00 - 20:00
    WEDNESDAY CLOSED

    PARKING

  • PARKING COFFEE X CACAO WORKS
    ADDRESS: Field Stone 1F
    1-10-5 Kamimeguro, Meguro-Ku
    Tokyo, JAPAN 153-0051
    153-0051 東京都目黒区上目黒 1-10-5
    フィールドストーン1F
    TEL: 03-6427-0806
    EMAIL: info@parkingmag.jp
    STORE HOURS: 9:00 - 19:00
    (Irregular Holidays)

    PARKING COFFEE X CACAO WORKS

  • Existence Co., Ltd.
    ADDRESS:
    1-1-45 Nakameguro, Meguro-ku
    Tokyo, JAPAN 150-0061
    153-0061 東京都目黒区中目黒 1-1-45
    TEL: 03-6412-8637

    Existence Co., Ltd.

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2013.08.26
Book Review Nº5
On The Road written by Jack Kerouac

 

旅は、人間を昂ぶらせる劇薬である。ガイドブックから一歩踏み出した場所に、旅先での非日常的な高揚感がある。本だって変わらない。紀行文学とは、決して作者の旅の追体験ではなく、未だ見ぬ旅路を思い巡らせる高揚感の追求ではあるまいか。旅も、本も、自分の世界の出来事だ。

ビートニクの旗手、ジャック・ケルアックの小説『オン・ザ・ロード』は1957年に出版された。ケルアックが、本書を執筆するモチーフとなるアメリカ大陸縦断ヒッチハイクに出発したのは、第二次大戦から間もない1947年である。アメリカ資本主義の黄金時代の幕開けと同時に、ケルアックは旅に出た。フランシス・フォード・コッポラは本作の映画化を気が遠くなるほどの年月をかけて企画。ついに念願叶い、ウォルター・サレスを監督に迎え劇場での公開に至った。日本では2013年夏に公開されるという。

小説『オン・ザ・ロード』を勧めるのに説明は要らない。本書は、どの書物より強烈に旅の高揚感を湛えている。 

今日まで「様々な人々に影響を与えた」という枕詞とともに語られ続ける『オン・ザ・ロード』だが、実際、僕自身も旅にいざなわれた。以下、『オン・ザ・ロード』にまつわる個人的な思い出話である。

高校三年の夏、初めて『オン・ザ・ロード』を読んだ。当時の邦題は『路上』。福田実の訳だった。近畿の田舎から出た事のない子供にはあまりにも刺激的で、あっという間に感化された。田舎には本の話をする友人はいなかったが、そう遠くないうち、自分は壮大な旅に出る必要があると確信した。読み終えた日の晩、僕は旅の計画をノートに書き始めている。

その後、上京して都内の大学に入り、存分な時間と資金の調達手段が生まれ、壮大な旅のチャンスが訪れた。行き先はユーラシア大陸である。以前にまして『オン・ザ・ロード』の影響下にあった僕は、東京で新しくできた友達の中から「ディーン・モリアーティ」役となる旅の同行者を探した。もちろん「路上」についても「ケルアック」についても「ディーン・モリアーティ」についても内緒である。

「ディーン・モリアーティ」役を島田、市木、田原、植村、瀬古、渡部、小口、宮田、宮本、松岡に絞込み、いよいよ田原に声をかけようという時、早々に候補から外した、同級生でゲームセンター仲間の山田がバイクの事故で頭を打って死んだ。

「ディーン・モリアーティ」は死んだ奴にくれてやる事にした。『オン・ザ・ロード』のディーンには似ても似つかぬ冴えない山田が僕の「ディーン・モリアーティ」だ。そうして結局、ケルアックに触発された旅の計画は終わり、一人で旅に出るようになった。

旅も、本も、主役は「あなた」である。心はいつも、旅立ちを待っている。

 

 

Text : Hiroyuki Motoori
Photo : Tsuzumi Aoyama