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PARKING
衣・食・住・遊のすべてにこだわりを持つ男性のための新しい生き方を模索する、Lifestyle Magazine型のショップ。
洋服のほか男性の生活全般に渡って必要な道具や消耗品をそろえ、「自然と街を結ぶトランスポーター」である自動車も重要なエッセンスとして機能。
PARKING MAGAZINE
今とこれからの男性の生き方を模索するウェブマガジン。働くこと、遊ぶこと、生活することを三位一体とし、「グローバル|ローカル」, 「都市|自然」, 「消費|創造」といった様々な隔たりを軽やかに飛び越えていく、自由で活動的でDIY精神豊かな男性像を模索していくウェブマガジンです。
PARKING COFFEE×CACAO WORKS
数社のロースターと契約し、セレクトしたスペシャリティーコーヒーを提供。
産地から直送されるカカオ豆を自家焙煎し、カカオと砂糖のみを用いた特別製法のチョコレートを販売。
コーヒーとチョコレートで朝の目覚まし、軽いランチ、午後の気分転換、夕方の一休みなどの時間と空間を提供します。

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  • PARKING
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    Existence Co., Ltd.

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2013.07.27
Movie Review Nº1 "On The Road"

Scion of Hobo
ホーボーの末裔であるサル(サム・ライリー)、ディーン(ギャレッド・ヘドランド)、メリールウ(クリステン・スチュワート)らはアメリカ大陸を縦横無尽に旅をする。


 

ジャック・ケルアックの小説『路上』は、あのボブ・ディランに「ぼくの人生を変えた本」とまで言わしめた彼の青春のバイブルだ。 

小説『路上』に登場する主要キャラクターは有名なビート作家たちがモデルになっている。知的で内省的な主人公サル・パラダイスはケルアックの分身だし、セックスやドラッグを奔放に楽しむ彼の親友のディーン・モリアティは少年感化院出身のニール・キャサディだ。彼は一冊も本を残さなかったが、ビート作家たちに多大な影響を与えている。そして友人カーロ・マルクスは詩集『吠える』でビート運動の指導者となったアレン・ギンズバーグ。

1947年、主人公サルとディーンは、流麗なステップダウンボディの高性能車「ハドソン」で、自由を求めてアメリカ大陸を縦横無尽に吹っ飛ばす! 『路上』にストーリーなんてないが、主人公サルの一人称で、恋愛と友情、セックス、ドラッグ、ジャズといった膨大なエピソードがほとばしる熱情ともいうべき即興的文体で物語られる一大青春小説だ。

小説『路上』が発刊されたのは1957年のこと。実はケルアックが完成させていたのは1951年だったが、6年間のタイムラグがアメリカ社会の変革と見事に合致した。ビートニクあるいは長髪、顎ひげ、ジーンズ姿というヒップスター(ヒッピー)と呼ばれる若者たちの精神風土が最高潮に達していた1957年に陽の目を見たことで、ボブ・ディランをはじめ、世界的に多くの読者を獲得したのだ。

この『路上』映画版を製作するにあたり、監督のウォルター・サレスは、若き日のチェ・ゲバラの南米旅行を描いた『モーターサイクル・ダイアリーズ』のチームを再結集した。脚本家ホセ・リベーラ、フランス人撮影監督エリック・ゴーティエ、美術監督カルロス・コンティらは、「ビート文学の聖書」といわれた原作のエッセンスとスピリットを忠実に抽出。とくに、ゴーティエの手持ちカメラは主人公サルとディーンがたどった生々しいアメリカの原光景、彼らの喜びや苦悩といった心象風景をつぶさに切り取っていて、観る者をけっして飽きさせない。

主要キャストは「オン・ザ・ロード=旅」を通過儀礼のようにして、ひと皮むけた成長の跡を見せる。サル役は『コントロール』でジョイ・ディヴィジョンのイアン・カーティスを演じたサム・ライリー。サルを「旅」へと誘うディーン役は『トロン:レガシー』の若手有望株ギャレット・ヘドラント。ディーンの奔放なセックス観を反映してか、彼のスッポンポンのシーンもやたら多い(笑)。このほか、ディーンの恋人メリールウ役でクリステン・スチュワート(大胆!)。このほか、キルスティン・ダンスト、ヴィゴ・モーテンセン、エイミー・アダムスらが「ビート世代の狂騒」をスクリーンに甦らせている。

この映画には、3つのステキな音が存在している。

1つは、サルがほとばしる熱情のともに立ち向かうタイプライターの音だ。それは、『路上』という傑作文学が創造される瞬間に立ち合うという悦ばしい音でもある。もう1つはロードムービーでもある本作の移動装置でもある当時のスポーツカー、ハドソンの心地よいエンジン音。そして3つめは、チャーリー・パーカーやディジー・ガレスピーをはじめとする、1940年代後半の狂騒を示す烈風のようなジャズの音だ。

ウォルター・サレス監督の『モーターサイクル・ダイアリーズ』ほど、深い余韻が残るかというと、この映画は完璧ではないかもしれない。しかし、この3つのワクワクする音が聴こえるだけで、なぜか無性に愛してしまうのだ。

近ごろの映画で、これほど創造的で美しく、熱情にあふれ、どこかもの悲しいタイプライターの音色は久しく聴いていなかった。「狂ったように、燃えて燃えて燃えて」とは『路上』の有名な一文だが、この映画『オン・ザ・ロード』を思い浮かべるとき、サル・パラダイスが燃えさかる熱情のうちに叩きつけるタイプライターのキイの音が印象的に激しく響きわたるのだ。

 

2The ’49 Hudson 
彼らの4,000マイルの旅のお供は1949年式ハドソン。車にも詳しい製作総指揮フランシス・フォード・コッポラの10年来の悲願の企画で、「ビート文学の聖書」とまでいわれた原作どおりの車が使用された。

 

3Sai’s Typewriter
この映画に登場するもっとも心地よいサウンドが、サル(サム・ワイリー)が燃えて燃えて燃えて、タイプライターのキイを叩く音だ。創造の瞬間、タバコ(道端で拾ったものでもいい)は手放せない。 

5800_014-w1 karuThe Beat Generation Family
後列左から、オールド・ブル・リー/ウィリアム・S・バロウズ(ヴィゴ・モーテンセン)、主人公サル・パラダイス/ジャック・ケルアック(サム・ライリー)、エドの妻ギャラティア・ダンケル/ヘレン・ヒンクル(エリザベス・モス)、エド・ダンケル/アル・ヒンクル(ダニー・モーガン)、前列左から、ブル・リーの内縁の妻ジェーン/ジョーン・ヴォルマー(エイミー・アダムス)、ディーン・モリアティ/ニール・キャサディ(ギャレッド・ヘドランド)、その恋人メリールウ/ルーアン・ヘンダーソン(クリステン・スチュワート)。

 

(C) Gregory Smith
『オン・ザ・ロード』8月、TOHOシネマズシャンテにて公開。
♦公式サイト:http://www.ontheroad-movie.jp
♦公式Facebook:https://www.facebook.com/pages/映画オンザロード/536070576445759
♦公式Twitter:https://twitter.com/OnTheRoad_mov
♦配給:ブロードメディア・スタジオ
♦R-15

Text : Mutsuo Sato