2014.10.27
第二回狩猟サミット
洋服、ファッションからは遠い所にある話題ですが、お付き合い下さい!
10月25日土曜日から27日月曜日の3日間、御殿場の「国立中央青少年の家」で開催された「第二回 狩猟サミット」に参加してきました。
会場は富士山の裾野に位置して、天気の良いときは会場の正面にばっちり美しい姿が拝めます。
この富士山周辺もここ数年は鹿が増え続けています。以前、会場のすぐ近くにある未舗装道を車で走りに行ったときにも、ヘッドライトの先をぎりぎりを鹿が横断する姿を頻繁に見かけました。ほんの1時間位走っただけだと思いますが、約50頭程度目撃しまています。この鹿の増加はこの地域だけで起こっていることでは無く、本州全域で増えており、鹿だけで82億円(平成24年度、農林水産省調べ)の農作物被害が発生しています。鹿以外にも猪で62億円、サルで15億円と被害総額年間230億円と、全国の農業従事者の方にとって大きな問題になっています。野生動物が増えた要因としては、古くは狼の絶滅による生態系の変化、近年では山林の放棄による森の変化、気候の変化、ハンターの減少などがあるようですが、十年ほど前までは鹿を見かけなかった地域でも大量発生するなどの問題が発生しています。
今回のサミットにも全国から鳥獣被害に悩む農業従事者の方や、地方自治体の猟銃被害対策担当の方なども多く出席されていました。
それ以外には純粋に狩猟に興味を持つ初心者とこれから始めようとする人、大学で生物を研究する教職員と学生、地域おこし協力隊に参加する人、エコツーリズムやキャンプ場を運営する人、ジビエ料理を愛する人などが中心となっていました。ビックリしたのはちょうど三分の一の出席者が女性でした。
今狩猟は相当密かながらブームになってきています。メディアで取り上げられる機会も増えてきており、女性狩猟者も増加しています。これまで、狩猟と言えば完全の男性の世界でしたが、大きな変化が起きているようです。
講師として参加していた千松信也さんも「狩猟プチバブル」と表現されていました。この狩猟ブームの盛り上がりの理由はいくつか考えられますが、大きくは以下の理由にまとめられると思います。1.先に述べた鳥獣被害の理由の一つがハンターの減少によるもので、ハンターの増加が必要であり、自治体などのハンター増の取り組みがある。2.食に対する関心から野菜、魚介類以外に肉も自然のものを自己調達しようという動きがある。3.アウトドアブームのたどり着いた先の一つとして、アウトドアスポーツの源流であるハンティングへの関心が高まっている。4.新しいライフスタイルを求めて里山など山間部へ移住する人が増加しており、狩猟の必要性が生まれている。
そして、何よりも漫画「山賊ダイヤリー」(岡本健太郎、イブニングKC)や「ぼくは猟師になった」(千松信也、新潮文庫)などの狩猟関連書籍の出版が大きな影響を与えています。石破しげる地方創世大臣も読んだという「里山資本主義」(藻谷浩介、角川書店)など所謂「田舎暮らし」を提唱する流れなどと合わさって、一つの流れが出来てきています。
これは日本だけのものではなく、リーマンショック以降の海外でも一歩先を行って進行しています。MARKAWARE2014秋冬のテーマにしたオーストラリア在住のローハン・アンダーソンによる「Whole Larder Love」。彼はオーストラリア国内のみならずアメリカやヨーロッパでも講演活動を行って古くて新しいライフスタイルの提唱を行っています。その一例としてはマンハッタンでウサギのさばき方&料理教室など。僕の狩猟に関する興味も彼のBLOGとこの本がスタートになっています。
今回の「狩猟サミット」では、多くのワークショップが開かれました。それは「シカマタギの郷、井川と山岳猟と利用文化」、「初心者のための狩猟講座」「獣害問題の基礎知識」「鹿革クラフトワークショップ」「プロの美味しいシカの調理法」などなど。マタギ文化などの日本の狩猟の歴史から、地方自治体の獣害対策の実例、実際の狩猟方法、そして獲物の活用方法と多岐にわたる内容でした。
夜は懇親会。約200名の参加者が集い、全国の情報交換を行いました。僕が話を話をした中で印象に残った方々は、北欧で楽しみながら酪農を学び静岡で酪農を営む20代の男性や、国立大学で生物の研究をして狩猟に目覚めた人、大手不動産会社の研究所で森林の有効活用を研究するうちに狩猟に興味を抱いた人、自然農法を実践する中で獣害対策として狩猟の必要性を感じた人、美容師をしながら親から引き継いだ山で狩猟を始めた2女性などなど。楽しくいろいろな方と話ができました。
そして楽しみだったのが、ハンターの方々が提供してくれた肉をフレンチのシェフの方などが料理したジビエ料理。シカ、イノシシを中心に熊や蜂まで。それぞれに工夫された料理が供されました。
これまで接することが無かったバックグラウンドや思想を持つ人達の交流は大きな刺激になりました。自分とは別の世界と感じていた人達がぐっと近い存在と感じられるようになりました。普段東京で暮らし、月何日かは嬬恋村での生活と二重生活をすることによって、以前よりは自然に近いところにいると思っていたのですが、まだまだ遠い所にいたんだな、まだまだ傍観者だったなと感じています。
自分の出来ることは限られているのに、どうしても見ているだけといのが楽しくなく、プレイヤーになりたい性格なので、今回の体験が一歩をすすめる機会になった気がします。狩猟という特殊な世界で、動物の命を奪うという行為に対して理解が得がたいのは分かっていますし、葛藤もあります。しかし、この先の暮らし方を考えた時に僕にとっては避けて通れない道だと思っています。
後日PARKING MAGAZINEでも同行してくれた青山さんによるイベントの詳細をアップします。併せてご覧下さい。
Text & Photo : Shunsuke Ishikawa