2014.09.02
映画「365日のシンプルライフ」を見ました
渋谷ユーロスペースにて公開中の映画「365日のシンプルライル」を見てきました。今の時代にピッタリのテーマだからか、ポスターのデザインが良いからか平日の夕方でも劇場はかなりの混雑していました。
失恋した男性が、前回の失恋の後に爆発した物欲により溜まりにたまったものを、今度は一切無くしてみるというところからスタートする映画です。
映画の概要はhttp://www.365simple.net/をご確認下さい。
感想は、「せっかくいいコンセプトなのに、もったいない。」
どこかで「モノ」ではなく「コト」ということになるんだろうと思っていたけど、あまりにも早すぎる。もっと、モノとコトから離れた中での孤独を見つめてみるのかと思ったけどそれも違う。男性目線なら、何を倉庫から持ってくるかというところへの哲学的な思索を描いてくれると嬉しかった。リストをちゃんと公開して、もっとモノによったところから見えてくるコトが見たかった。女性目線なら、一旦全てを綺麗にした後の孤独から生まれてくる濃密な人間関係・コミュニケーションを見たかったんじゃないかなと思えます。
もう一点、今ひとつぐっとこなかった理由は「自分でも体験していたことだった」ということなのかなと思います。映画の中のマットレスが運び込まれた部屋を見て、すっかり忘れていたことを思い出しました。ルールを決めるとか気負った感じはなく、普通にやっていたのですっかり忘れていたことです。
僕が東京で住んだ2軒目の部屋、そこへ引越した時のことです。とにかくモノに溢れた部屋がいやでいやでしょうがなかったので、1LDKの新しい部屋にはマットレス(ベットは階段が狭すぎて運び込めませんでした…)と掛け布団、小型の冷蔵庫と洗濯機だけを持ち込みました。前の部屋も継続して契約していたので、そこから必要なものだけを少しづつ移して行って、不必要なモノは処分するか、事務所・倉庫に持って行きました。結果、テレビもオーディオもない、洋服は無印のケース1つとハンガーラック1本。アウター、シャツ、ボトムスがそれぞれ4〜5枚ずつ程度、靴は5足くらい。カットソー・ニット、下着はケースに入るだけ。洋服屋としてはどうかと思いますが、会社に行くとサンプルがあるという恵まれた環境ですので問題は全くありませんでした。料理もほとんどしなかったのでキッチンもスッキリでマグカップに皿何枚かとナイフ一本。エンターテインメントは文庫本の古い作品が読みたいと思っていた時期だったので、積み上げても場所はそれほど取りませんでした。おまけに過去の名作を大量に読むことが出来ました。そんな感じで2年ほど生活してみたのですが、何の不便も無い生活。都会で暮らしていくのに必要なものはホントはすごく少なくて、シンプルライフは都会の方が実践しやすい。食べ物や生活必需品はどこでもありつけるし、エネルギーは全てスイッチ一つ。移動手段を自前で持つ必要もない。
そういうことを考えると、このコンセプトを都会では無く、田舎や山の中で実践してみるとおもしろいかもしれないと考えています。そうすれば人間が生きていくために本当に必要なモノ、コトがもう少し根源的にクリアに見えてくるかもしれない。
でもそれってソローが昔やったことか…
Text & Photo : Shunsuke Ishikawa