2013.12.30
Jotul F500 Special Edition
先日のブログでも少し書いたエネルギーの自給について考えるとどうしても避けて通れない道具があります。
薪ストーブ。伐採できる木があればエネルギーが自給できる。暖房器具としてだけではなく調理器具としても十分な機能を持っている。つまり人が生きていくための内外両方のエネルギーを供給してくれる道具ということが言えます。僕はまだ入り口に立っただけでいろいろ語ることは出来ないのですが、薪ストーブについて簡単に。
標高1200mにあるPARKING ASAMA BLANCHは12月後半には昼間も0度近い気温となり夜間はもちろん氷点下。積雪も多いところなので暖房器具は非常に重要です。昨年は暖房器具と除雪道具の不備で、冬場に滞在することが殆ど出来なかったので、この冬こそはといろいろ準備をしています。そんな中で活躍してくれるのが薪ストーブ。ここでの暮らしのキーになる道具です。
もともと古いカナダ製の薪ストーブが付いていたのですが、これがかなりのくせ者で、薪ストーブのくせに電源が必要。薪で温めた空気を電力を使用したファンで強制的に排出する、薪ファンヒーターみたいな物でした。たしかに温かい風は出てくるのですが、ファンの音が相当大きく、鋼板製の本体から出る不協和音も気持ちの悪い物でした。おまけに触媒機(触媒を利用して薪から出る燃焼ガスを低温で再燃焼させる仕組みのストーブ)ですが、触媒はとっくの昔に寿命が過ぎていて、今は手に入らない。見た目も少し残念な感じでした。
そこで、今年の初めから入れ替え機を探していたのですが、どれも一長一短で決めかねていました。見た目・暖房性能・調理機能などの条件をクリアする物がなかなか無く、あちらを立てれば、こちらが立たずの状態。そうこうしているうちに冬が迫ってきたので最後は勢いで決めてしまいました。
選んだ機種はJOTUL(ヨツール) F500 SE。現在はノルウェーの会社ですが、もともとはヒッピーの聖地となっているデンマークのクリスチャニア近郊で生まれたメーカーです。この機種に決めた理由は1.十分な暖房能力、2.調理可能な天板とダッジオーブンを飲み込む炉の大きさ、3.クラシックな外観だけどガラス面の装飾を無くして見た目をすっきりさせたデザイン(SE以外はガラス面前面に鋳鉄製の飾りがついています)、4.鑑賞できる炎の美しさ、の4点です。
最初はアメリカ製のものを考えていて、暖房性能・調理性能はばっちりなのですがアーリーアメリカンな外観が耐え難くて。次に調理に特化した物も考えたのですが、どの機種も短い薪しか入らず、こまめな薪の補給が必要で、朝まで熾火を残しておくことが出来そうにないので却下。それで残ったのがヨーロッパのメーカーJOTULとDOVREでした。DOVREも特に最新型のVITANGEシリーズに気持ちが相当傾いていたのですが天板での調理機能が理想に及ばず。最終的にJOTULに落ち着きました。外観に若干不満は残りますが、今はこれを選択して良かったと思っています。
このストーブ扱いは非常に楽で燃焼させれば後はレバー一本での調節のみ。このレバーで空気量を調整すれば燃え残ったガスが再燃焼するオーロラ調な炎のゆらぎを楽しめます。
天板上部はホットプレートになっていて、お湯を沸かすのはもちろん、フライパンを置いて焼き物も十分可能です。また炉内には12インチまでのダッジオーブンが入るので、寒くて屋外で料理が出来ないときもダッジオーブン料理を楽しむことができます。
暖かさはちゃんと焚けていればそこそこ。でもこれは建物のすきま風と蓄熱対策に問題がありそうです。また、寝る前に太めの薪を何本か入れておけば、朝起きたときにも熾火が残っており、薪を投入すると一気に燃え上がってくれます。
薪ストーブはほとんど信仰ともいえるファンを持つ道具なのですが、そんなことよりも寒い・腹減ったの二つの理由をもとに、軽い気持ちでがんがん使って行きたいです。先日行った瀬戸さんのお宅では時計型の薪ストーブを使っていましたが、これは暖房に煮炊きにと大活躍で完全に生活の道具として活用し切っていました。焚き方も儀式的なことは無く、バーナーを使って一気に燃え上がらせる。生活の道具としての無駄を廃した使い方、そんなのが理想です。
Text & Photo : Shunsuke Ishikawa