2013.12.28
Real Hunter’s Life
先日新宿から高速バスに乗って飛騨高山に行ってきました。PARKING MAGAZINEの取材でどうしても話を聞きたい人・訪れたい場所があったのでバスで5時間さらにそこからレンタカーで1時間弱走ってきました。長時間でしたが、槍ヶ岳・乗鞍岳などの名峰の谷間を通りすっかり雪化粧をした景観を楽しみながらの移動となりました。
今回の旅であいたかった人というのが瀬戸祐介さん。狩猟で生計を立てる数少ない人です。もともとアラスカにキングサーモンを釣りに行った際に経験したハンティングにより体の中に眠っていた狩猟本能に火が付いて日本でも狩猟をはじめ、今ではそれで生計を立てるまでになった35才です。オカリナ奏者兼作家としての顔も持ち、カスタムナイフビルダーでの修行経験もあるなどマルチな才能を持つ非常に面白い方です。
これからの時代の生き方における選択肢の一つとしていろいろなものからの自立ということについて悶々と考えていたのですが、そんな中「必要とするエネルギー(体内・体外両方の熱)を自給できるようにすることこそが真の自立だ!!」という一つの答えにたどり着きました。対内的なエネルギーというと食料。自ら農園を作り野菜を作る方は大勢いるとは思うのですが、動物性タンパク質を自給自足する人はまだまだ少ない。で、それを実践している人に会ってその生活ぶり・考え方を聞いてみたいと思い、実際にあってきました。
お宅は一番近くのコンビニ・スーパーともにクルマで40分という場所でしたが、山の中でもそのあたり一体が少し開けた場所で雪の中に立つ築130年の家はいわゆる古民家的な外観では無くリアルハンターが暮らす家として完璧すぎるような佇まい(残念ながら建物の写真はNGということでした)。出迎えてくれた瀬戸さんは屈強そうな体格にいい笑顔のフランクな人。このお宅に一泊し、瀬戸さんと奥さんの話をたっぷりと伺い、今は雪に覆われた近くの猟場に連れて行ってもらいました。残念ながらこの2日間では獲物を捕ることは出来ませんでしたが、非常に貴重な体験となりました(自分の体力の無さを思い知らされる経験でもありましたが….)。
食事は瀬戸さんがそのシーズンとった鹿やイノシシで作った料理を頂きましたが、どの肉も料理も実に美味しい。鹿は最低2週間熟成するということでしたが、この日頂いた串カツは熟成度合い7割程度とのこと。しかし、しっかりとした赤身のうまみが感じられ、ジューシーで柔らかい。
またイノシシで作った猪鍋は刻んだ脂身をしっかりと入れ薄めの味噌仕立てにしたもの。こちらも柔らかくて臭みとは全く無縁。肉は豚よりも豊かな味わいで脂身にもしつこさが全く無く旨みのつまったものでした。
狩猟に対するイメージとして、動物を殺すことに対する嫌悪感が非常に強いことは理解できます。ただ僕は肉を好んで食べるので、その肉を誰かに間接的に提供してもらうのかそれとも自らその命をもらうのか、どちらがいいのかはいろいろ考えてみる必要があると思っています。特に瀬戸さんをはじめ多くのハンターの獲物は鹿やいのししなどで、これらは近年ますます数が増え獣害が深刻となっている動物たちです。近年のハンター数の減少もその個体数の増加につながっているといいます。近年は行政も動きハンター数の増加を図っているところです。彼も獣害に苦しむ農家の方のために駆除を行う「猪鹿庁」というNPOに協力して活動しています。
夜、瀬戸さんがふいてくれたインディアンフルートのペンタトニック音階の音色は肉になってくれた動物たちへのレクイエムに聞こえました。
この取材での記事は1月の半ばにPARKING MAGAJINE本編でよりしっかりお伝えします。
Text & Photo : Shunsuke Ishikawa