2013.10.08
刃物について
マニアックな話を少々。
店で道具類を扱うことにして、何よりも置きたかったのが刃物類です。道具の原点で、そのシンプリシティーは孤高の存在感を持っていると思っています。
刃物にもかなりのこだわりがあります。包丁は日本の鍛えられた鋼がいいので新潟燕三条の重房。薪を割る斧はスウェーデン鋼のグレンフォシュ・ブルークス、カッターやハサミの代わりに播州三木の肥後守などできればステンレスではなく錆は出やすいけど切れ味の鋭い炭層鋼ものがいい。
アウトドアで使用するナイフも同じです。この写真にあるのはアメリカのハンティングナイフGERBER社の名作60年代の「FOLDING HUNTER」です。現在ほとんどのナイフがステンレス製になってしまっていますが、80年代まではこのナイフに使われている通称「ハイス鋼」という炭素鋼のものがありました。
GERBER社はポートランドで1910年に創業したナイフメーカーで、Abercrombie&Fitch(アバクロはもともとNYの高級アウトドアショップでした)にナイフを納入することからスタートしました。その後1987年にフィンランドのフィスカースに会社が売却されるまでは、ハンティング用やキッチン用などの分野で数々の名品を作っていました。アメリカ製のナイフといえばBUCK(バック)とGERBER。どちらかというとBUCKは質実剛健なイメージで、GERBERが繊細で美しく切れ味鋭いイメージでした。そのイメージを引っ張っていたのが「ハイス鋼」を使用したシリーズです。中でもこのナイフは世界一美しく、実用性の高いフォールディングナイフだと思っています。
PARKINGにはこれ以外にシースナイフなど何点かのオールドガーバーをおいていますが、もちろん全て「ハイス鋼」です。
Text & Photo : Shunsuke Ishikawa