2013.10.01
読了 里山資本主義
間近に迫った展示会に向けて準備をがんばっているところです。しかし何かに集中しようとすればするほど他のことが気になる質なのでずっと考えていることがあります。それが「ポスト2020の生活」。先日東京オリンピック開催決定のニュースを聞いてすぐに思ったのが「これで後7年間の道筋は決まったんだろうな」ということでした。しかし、その後はどうなるんだろうということが気になって仕方がない。で、ポスト2020の生活を考えるために本をいろいろと買って企画の合間に読んでいます。
この本もそんな中の一冊。「里山資本主義」という題名だけ聞くと?な感じですが、おもしろく読みました。すごく簡単にいってしまえば「資源に恵まれた土地で資源を有効活用して暮らしましょう」ということですかね。じゃあ資源とは何かと考えれば人間の生命維持に必要となるエネルギー(燃料や食物など)を供給する天然資源と人間の手間が作り上げる人的な資源。これをなるべくコスト(金銭的な意味で)をかけずに入手し共有する仕組みを作り上げ、入りを増やすのでは無く出を減らしましょうということ。都市部に生きている人は気がつきにくい資源が自然の豊かなところにはたくさんありますよということを、いろいろな事例で紹介している本です。
そこでまず、都市生活者が考えるべきは「じゃあ里山に住んでみよう」と言うことではなく、気づかない資源に気づき活用する方法についてかなと思いました。しかしよくよく考えてみれば都市にある資源というのがよく分からない。そもそも資源ってなんだろう?たとえば自分の仕事である衣類。これは人間の生命維持に必要な外部環境から身を守り、体温をコントロールするのに必要な装置。これを作るために必要な資源はまず原材料となる綿花や獣毛や石油など。それを各段階の加工業者が手間をかけて商品化していく。そのかけられた手間への対価の積み上げが洋服の値段になっている。でも本来そもそもの原材料は自然が作り出した無料のもののはず。ようは全て手間賃。もとの原材料を作ってくれるのは自然、つまり土地(他のものでは海の場合もあり)。狩猟採集の段階では全ては土地(海)が与えてくれる無料のものあった。でも都市部はほぼ全ての土地に所有者がいて、そこに有る物ほぼ全てに人の手間がかかっている。そうするとその資源を活用しようと思うと全てが高コストになっていく。と、考えて「あそうか、その資源をほぼ無料で与えてくれる土地の最も身近なのが里山なんだ」という一周回って元にもどるような思考になってしまい「里山資本主義」という言葉に納得しました。ポスト2020のテーマの一つが「拡大せずに維持できる」だと思っているので、それに向けたヒントを与えてくれました。
でも、「日本の解決策」というのは誇大広告ですね。日本の一部地域の解決策というのが正しいところ。
Text & Photo : Shunsuke Ishikawa